スマートフォン1台あれば、いつでもどこでも語学に触れられる(写真はイメージ)=ゲッティ

 新年を迎え、「今年こそは」と外国語の勉強を始めようとする人も多いのでは。

 ただ語学は一朝一夕で身につくものではなく、途中で挫折しがちだ。

 漫画家のこまきときこさんは英語学習でつまずいた経験から、「頑張らない勉強」にたどり着いた。

 その極意とは――。

多言語を楽しく学ぶ異色の漫画家

 こまきさんは2024年、語学を楽しく学び続ける日常を描いたコミックエッセー「つれづれ語学日記」(KADOKAWA)でデビューした。

 語学に対する自身の思いや、これまで実践してきた勉強法の数々を温かみのあるタッチで描いた作品だ。

 「長い漫画を描いたのは初めてでしたが、語学について言いたいことが、こんなにたくさんあったことに自分で驚いています」と話す。

 現在、こまきさんは英語やドイツ語、エスペラント語を中心に勉強しており、ジョージア語やロシア語、アラビア語、韓国語なども「かじったことがある」という。

 ちなみにエスペラント語とは1887年、民族間の対立に心を痛めたポーランド出身のユダヤ人眼科医、ザメンホフが発表した人工言語だ。

こまきときこさんが自身の経験をつづった「つれづれ語学日記」=KADOKAWA提供

その言語に触れると、面白くなる

 「上手に読み書きできなくても、しゃべれなくてもいいから、その言語に触れようとしていると、面白いことがたくさんあります」

 多言語を学ぶ魅力について、こまきさんはこう語る。

 外国語の中には、使ったことのない筋肉を動かさないと発音できない音がある。

 何気ないあいさつの表現や言い回しから見えてくる文化もあるという。

 「彼らは世界の切り取り方が日本語話者とは違うんだろうなとも思え、それがなんだかうれしい」とも。

 自身にとっての語学を「ずっと一緒にいたい趣味」と表現するのだ。

以前は試験の点数にこだわっていた

 ただ、そんなこまきさんも、以前は英語の国際テスト「TOEIC」の点数にこだわるようなタイプだった。

 6年ほど前、知人に会いに初めて米国を訪れたのを機に、英語の勉強を再開。

 まだ受けたことはなかったTOEICの問題集を購入した。

 もともと、何か目標があると自分を追い込んでしまうような性格だ。

 受験の度に点数は伸びていった。

 加えてその頃は、仕事でうまくいかないことが多く、勉強に「しがみついていた」面もあったという。

 「高得点を取れればキャリアアップというか、今いる環境から抜けられるかもしれないと思って」

 点数が一定の水準まで上がると、翻訳を学べるオンライン講座の受講も始めた。

「つれづれ語学日記」の作者、こまきときこさんが描いた自身の似顔絵=本人提供

「やればできる」と思っていたが…

 他の受講生は、みな英語力に自信のある人ばかり。

 実力差を感じたこまきさんは、TOEICの勉強にさらに精を出した。

 50点上げるには140時間必要だから1日2時間勉強して……などと具体的な計画も立てて、その通りに進めた。

 ところが――。

 満を持して臨んだTOEICの受験。

 点数は伸びるどころか、なぜか前回より落ちていた。

 「やればできる」と思っていた分、ショックは小さくなかった。

 「心が折れました」

 結局、翻訳講座は1年ほどでやめた。

難しい言語を学ぶと英語が簡単に?

 「気晴らしのつもりで」ドイツ語の勉強を始めたのは、その頃だ。

 <英語より難しい言語を学ぶと英語が簡単に思える>

 そんな趣旨の書き込みをインターネットで見つけ、難しいイメージのあったドイツ語を試しにやってみることに。

 アルファベットの発音一つとっても英語とは違い、未知の言葉に触れる面白さにこのとき気づいたという。

 そのうちドイツ文化も気になり始めた。

 「(環境に優しい)エコフレンドリーな感じとか、動物保護に力を入れているところもいいなと思って。そうか、そういう文化面も言語を通じて見ていいんだなって」

外国語の原書を読むと、好奇心を刺激される(写真はイメージ)=ゲッティ

試験のための勉強でなく楽しさ優先

 その後、前述のようにエスペラント語などにも手をつけ、多言語学習にのめり込んでいったこまきさん。

 ほどなくして英語も再開したが、試験のための勉強には、もう戻らなかった。

 心がけたのが、楽しさ優先の「頑張らない勉強」だ。

 英語の料理番組を見たり、幼い頃に読んだ海外の児童文学の原書を読んでみたり……。

 「TOEICの点数を取るには向いてなさそうだけど、面白そうな『教材』をどんどん試しています」

 こまきさんは美術や日本史が好きで、美術館などを訪ねては英語のリーフレットをあえて手にするようにもなった。

 「興味のあることを英語で読むのはエキサイティングです。『儒学者』ってこう言うんだ!とか」

 いろいろな発見があり、知的好奇心もいい具合に刺激されるのだそうだ。

英語の料理番組を見るのも、楽しめる学習法だ(写真はイメージ)=ゲッティ

集中学習より「すきま時間」を活用

 以前は帰宅後や休日に机に向かっていたが、その時間も大幅に減った。

 その代わり、通勤時や帰宅時の「すきま時間」を活用。

 NHKのラジオ講座や、英BBCが配信する英語学習者向けのポッドキャスト番組などを聞くようにしている。

 何を聞くかはその時々で変わるが、日常に自然な形で学習を組み込むことで、気持ちの波に左右されることもない。

 これも無理なく続ける工夫の一つだ。

朝一番、ゲーム感覚で単語を覚える

 今やスマートフォン1台で、いつでもどこでも語学に触れられる。

 気軽に勉強できる学習アプリの活用もお勧めだという。

 英語以外の言語を学ぶため、こまきさんが使っているのが「Duolingo」(デュオリンゴ)。

 ゲーム感覚で単語を覚えられ、毎日寝起きの5~10分を学習時間に充てている。

 「朝一番に学んだ」という感覚が心地よいのだそうだ。

「つれづれ語学日記」の一場面=KADOKAWA提供

学習記録を日記アプリに、成長を喜ぶ

 こまきさんは、こうした学習の記録を日記アプリにこまめに保存している。

 覚えた表現や講座を聞いた感想など、気づいたことは何でもだ。

 たまに見返すと、今では当たり前に知っていることでも、「『この時の自分は知らなかったんだ。成長している!』と思える機会が増える気がします」と語る。

 「語学は比較的、将来こうなっていたいという理想を想像しやすい分、『現在の自分のできていなさ』とのギャップがしんどいですよね。なので、道のりの長さにがっかりするより、できたことを細かく振り返っていちいち喜びたいです」

 せっかく始めても、三日坊主で終わってはもったいない。

 息長く語学と向き合うため、頑張りすぎないのがコツなのかもしれない。【金志尚】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。