2019年10月31日未明、首里城が燃えた。

 正殿の1階から上がったとみられる火は、大きく燃え広がり、一帯を焼き尽くした。

 あの夜、現場で何が起きたのか。沖縄県の第三者委員会による報告書や、監視カメラの映像、関係者の証言などからたどる。

 最初に異変を知らせたのは、火災報知機ではなく、防犯用の人感センサーだった。

Aストーリーズ「燃え落ちた宝」(1月26日午前8時配信)

2019年は文化財防火の転換点となった。人々の「宝」をどう守るのか。浮かび上がった課題と、対策に動く人びとを追う連載を始める。そのプロローグとして、出発点となる首里城火災を動画とグラフィックで振り返る。

遅れた初期消火

02:30

何かが小さく発光する様子を監視カメラがとらえる。火災との関係は不明

写真・図版
監視カメラがとらえた発光。表示時刻は実際とずれている。実際の時刻は午前2時30分=内閣府沖縄総合事務局提供

02:33ごろ

正殿1階北東側で出火(推定)

02:34

奉神門中央監視室の人感センサーが発報

このとき、首里城には警備員5人と設備会社の監視員2人の計7人がいて、うち5人は仮眠中だった

02:35

奉神門中央監視室でモニターを監視していた警備員が警備会社に電話。「現場確認に行き、改めて電話する」

02:37

警備員が正殿へ。2階に上る階段手前で煙に気づく

02:39

警備員は消火器を取るため、奉神門中央監視室へ走って戻る

02:40

奉神門中央監視室に戻った警備員が、もう1人の警備員と設備会社の監視員に火災だと告げる

それとほぼ同時に火災報知機が発報し、警備会社に自動通報。警備会社からの電話を受けた警備員は、消防への通報を警備会社に依頼

2人の警備員は火災時の役割分担が不明確だったため、分担を話し合う

02:41

警備会社が消防に「正殿(の)エリアで煙が出ている」と通報

2人の警備員が分担を話し合うなか、監視員が1人で消火器を持って正殿北口へ。半開きのシャッターから正殿内を確認すると、中は煙が充満し、外に噴き出していた

消火器を持って正殿に向かう監視員。実際の時刻は午前2時42分=内閣府沖縄総合事務局提供

02:42

監視員は正殿東側の引き戸から中に入ろうとしたが、すき間から煙が噴き出していた。正殿の中に入って消火するのは難しいと判断し、奉神門中央監視室に走って戻った

02:47

警備員2人の話し合いが終わり、1人が消火を担当し、もう1人が電話対応を担当することに

この頃には正殿正面北側の建物内の出火が外から確認できる状態になる

正殿正面北側。外から火が見える。実際の時刻は午前2時47分=内閣府沖縄総合事務局提供

強まる炎

02:48

「正殿(の)エリアで煙が出ている」との通報を受けた消防の首里第1小隊が、情報収集のため首里杜館(すいむいかん)に到着。警備員のバイクの誘導で二階御殿(にーけーうどぅん)南側警備ボックスへ

02:50

正殿正面北側から建物外へ勢いよく火が出る状態になる

激しく燃える正殿正面北側。実際の時刻は午前2時51分=内閣府沖縄総合事務局提供

02:52

奉神門中央監視室にいた警備員が正殿北口に向かい、消火器を噴射。消火器の噴射はこれが初めて。すでに炎は大きく燃え上がっていた

炎に向かって消火器を噴射する警備員。実際の時刻は午前2時52分=内閣府沖縄総合事務局提供

02:53

警察が二階御殿南側管理用ゲートに到着

02:54

最初の消火器を切らした警備員が奉神門に戻って2本目の消火器を取り、正殿北面の北側に近づいて噴射

02:56

首里杜館から警備員に誘導された消防が、二階御殿南側管理用ゲートに到着

03:01

この時刻までに消防計9隊が首里城に到着。城郭内には上水道に直結した「公設消火栓」がなく、数百メートル離れた沖縄県立芸術大学近くの消火栓から複数台のポンプ車を経由してホースを延ばした。途中に急勾配の階段もあり、ホースを延ばすのに時間がかかった

正殿を炎が包む

03:01ごろ

3階建ての正殿は、床も壁も天井も木材でできていた。2階の屋根の軒に火が燃え移り、南側まで火が回る

正殿の裏側で屋根の軒沿いに広がる炎。実際の時刻は午前3時1分=内閣府沖縄総合事務局提供

天井裏と梁(はり)がつながる構造で、火は一気に建物上部へ広がった

正殿に向かってホースを延ばす消防隊員。実際の時刻は午前3時3分=内閣府沖縄総合事務局提供

03:05

首里第1小隊が正殿に向けて放水を開始

その後、他の隊も次々と放水を開始。施錠された城門を壊して現場に急ぐ消防士もいた

正殿に放水する消防隊員。実際の時刻は午前3時5分=内閣府沖縄総合事務局提供

03:08

正殿前の広間「御庭(うなー)」の放水銃2基を使っていた西高度救助第1小隊が、放水の支障となっていたイベント用舞台装置を破壊。しかし、放水銃の水量は10分ほどで低下した

03:15

指揮第1小隊は御庭の東端に現場指揮本部を設置。西第2小隊が正殿に向けて放水を開始

その後、正殿からの熱で、現場指揮本部は御庭の東端から奉神門の真下に移動

03:24ごろ

正殿北側で火災旋風のような現象が発生

03:36

再び火災旋風のような現象が発生。各隊に一時的に退避命令が出された

正殿の火災の状況は悪化の一途をたどった。火は複数方向へ同時に拡大していく

連なる屋根、止まらない延焼

03:51ごろ

正殿北側から北殿に延焼

中央第1小隊、首里第1小隊、神原第1小隊などが北殿に放水

03:55ごろ

正殿の炎が正殿南側の黄金御殿(くがにうどぅん)に延焼

03:56

指揮隊は、一時退避して現場指揮本部に集結するよう無線で発信

03:59ごろ

正殿屋根瓦が一部崩落したことを受け、一時退避して現場指揮本部に集結するよう改めて無線で発信

炎を上げ、崩れ落ちる首里城の正殿=石崎雅彦さん提供
写真・図版
南殿・番所の消火活動にあたる消防隊員=2019年10月31日午前6時29分、那覇市の首里城、同市消防局提供

11:00

火災鎮圧

13:30

消防署隊長が鎮火を宣言

火災は約11時間続き、消防車両60台219人、消防団1台10人が出動。城郭内の建築物11棟のうち正殿など6棟が全焼し、2棟が部分焼した

首里城はなぜ焼け落ちたのか

 県が設置した第三者委の報告書によると、出火原因は特定できていないが、電気設備や電気機器のトラブルが原因である可能性は否定できない。

 木材を多く使った建物が密集しているという構造上の特徴に加え、検知に時間がかかる「空気管式熱感知器」が使われ、スプリンクラーが設置されていなかったことなどから、初期消火ができなかった。城郭内に公設消火栓がなく、城郭外の消火栓からホースを長距離延ばすのにも時間がかかった。

喪失感、繰り返さないために

 鮮やかな朱色の壁と赤瓦の正殿は、那覇の街中からもよく見えた。

 1945年に沖縄戦で破壊された後、92年に復元され、多くの人にとってかけがえのない存在になっていた。それだけに、焼失した時の喪失感は大きかった。

 正殿は現在、2026年秋の完成に向けて復元工事が進められている。

 炎感知器やスプリンクラーの新設、消火水槽・防火水槽の増設や送水管の敷設などが予定されている。消火訓練も重ねているという。

 今回の火災は、木材を多く使った伝統建築の防火対策の重要性を浮き彫りにした。

 悲劇を繰り返さないために、火災を風化させず、教訓を生かし続けることが求められている。

Aストーリーズ「燃え落ちた宝」(1月26日午前8時配信)

首里城が燃え落ちた2019年は、文化財防火の「転換点」となった。人々の「宝」をどう守るのか。浮かび上がった課題と、対策に動く人びとを追う連載を始めます。

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