能登半島地震への災害派遣の経験を基に、大阪府警住之江署員が備蓄食品のアレンジレシピを開発し、署のホームページで公開している。備蓄食品をよりおいしくすることで、時に長期にわたる避難生活が少しでも快適になればとの思いが込められている。
1月中旬、大阪市住之江区のアジア太平洋トレードセンター(ATC)で、中華料理店さながらにジューッと食材を炒める音が響いた。特設ブースで警察官がフライパンを振っている。中身をのぞくと、おいしそうなチャーハンが出来上がっていた。
このイベントは署が開催したクッキング講座で名付けて「Police×cook(ポリスクック)」。チャーハンの材料は、避難所などで配られるレトルトの白米▽ツナ缶▽お茶漬けの素(もと)▽しょうゆ――の4点だけだ。
署員が「簡単においしく作れます」と紹介すると、買い物客らは思わず足を止めて見入っていた。調理を手伝った同署の辻林務警備課長が「適度な歯ごたえもあっておいしいです」と“食レポ”すると、拍手も湧いた。
このレシピが生まれたきっかけは、2024年元日に発生した能登半島地震だ。同署員ら府警の警察官も、被災地で行方不明者の捜索・救助活動をはじめ、避難所の支援や治安維持の警戒活動を続けてきた。
活動するなかで目に留まったのは、慣れない備蓄食品に食が進まない人々の姿だった。災害備蓄用の白飯の中には、アルミパックで7年保存が可能なものもある。袋から出してそのまま食べられるものの、どうしても硬く、食味も淡泊だ。過酷な避難所生活で精神的にも肉体的にも負荷が掛かる中、食事の「質」は切迫した問題に感じられた。
そこで、災害時に入手できる最小限の材料や道具で定番の味を出せるよう知恵を絞った。同署によると、まずフライパンにツナ缶の油をなじませてご飯を炒めることで、ボリュームやコクを出す。さらに、お茶漬けの素を加えて彩りや食感に変化を加え、しょうゆで香りを引き立てることがポイントだという。
実演を見ていた同区の主婦、植田久江さん(74)は「備蓄、備蓄と言われるけれども実際に食べたことはなく、勉強になった。いざというときのためにも一度自分で作ってみて味を知っておきたい」と興味津々だった。
レシピは現在チャーハンのみで、フライパンやカセットコンロも必要だ。今後も新レシピを考案し、増やしていく予定という。
災害時の食事を巡っては近年、量だけでなく「栄養バランス」も注目されている。能登半島地震では、これまでの災害と比較して白米などの主食に加え、みそ汁などの副菜の支援が充実した。
しかし、その認識が広く浸透しているとは言いがたい。20年に発表された吹田市や関西大などの研究で、全国の740の自治体の避難所運営マニュアルを分析したところ、食事の栄養のバランスやその配慮についての記述があったのは約24%にとどまることが判明した。
農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」では、乾燥わかめなどの乾物やインスタントのスープなど副菜となる食品の備蓄も勧められている。
辻林警備課長は「災害時でも最低限の栄養バランスを考えた備蓄を進め、レシピを参考にしてもらえればうれしい。また、平時から備蓄食品を使いつつ買い足す『ローリングストック』も実践してほしい」と呼び掛けている。【露木陽介】
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