ニパウイルスの治療法は対処療法に留まる khaleddesigner-shutterstock
<インド東部で致死率の高いニパウイルスの感染が確認されている>
現在、東インドの西ベンガル州で流行しているニパウイルス。世界保健機関(WHO)はその致死率を40〜75%と推定している。
【動画】ニパウイルスの正体
この驚異的な致死率を誇るウイルスは、世界中でパンデミックを引き起こすのだろうか。
40カ国以上の90を超える主要な研究機関に所属する人獣共通ウイルスの専門家による団体、グローバルウイルスネットワーク(GVN)はニパウイルスの流行について、「懸念すべき重大な事態」ではあるものの、前例のないものでも、予期し得ないものでもなく、世界的な緊急事態を意味するものではないとの見解を示した。
「ニパウイルスがインド周辺や世界に拡大するリスクは非常に低い」と語るのは、シンガポールのデュークNUS医科大学教授であり、GVNシンガポールセンター長のリンファ・ワンだ。
「インドおよびバングラデシュでは、文化的、環境的な要因によって、同様の集団感染が繰り返し発生している。持続的なヒトからヒトへの感染が主因ではない」
ニパウイルスの感染は5件確認されたという未確認情報が流れたが、WHOによると、今回の西ベンガル州の集団感染で確認された感染例は2件にとどまるという。
インド当局は約200人に対して接触者追跡調査を実施したが、その全員がウイルス陰性と判定されている。
ニパウイルスの治療法開発に必要なこと
ニパウイルスは1998年に初めて記録された人獣共通感染ウイルス。果実を食べるコウモリを宿主とし、豚などの動物を経て人に感染する。
感染経路としては、感染した動物との接触や汚染された食物の摂取が主であり、ヒトからヒトへの感染は稀だ。
初期症状には、咳、呼吸困難、発熱、頭痛、喉の痛みなどがあり、感染が進行すると脳炎などの重篤な合併症を引き起こす場合もある。
GVNは、西ベンガル州での今回の流行を注視しており、インド南部のケーララ州にある先進ウイルス学研究所を通じて、ニパウイルスの監視や新たな診断検査の開発に取り組んでいる。
「公衆衛生体制と監視能力の整った国々は、ニパウイルスによるリスクを十分に抑えることができる」とGVNは指摘する。感染拡大防止において重要なのは、「早期発見、臨床現場での認識、迅速な診断」ともした。
GVNによると、今回のニパウイルス集団感染は、世界的な警戒を要する事態ではないものの、「新興感染症の脅威に対処するためには、監視や診断に加え、世界的に連携した科学ネットワークを継続させることが重要」だ。
ニパウイルス感染症は、検査によって感染の有無を確認することはできるが、現在のところ確立された個別の治療法は存在せず、予防用のワクチンもない。
感染した患者には、安静を保ちつつ水分補給、そして各症状に応じた対症療法が施されるのが一般的だ。
現在、モノクローナル抗体や新規抗ウイルス薬といった、いくつかの実験的治療法が開発中であり、初期の臨床試験に進んでいる。
ワンは「(治療法の開発)進展のためには、公益を目的とした持続的な投資と国際的な協力が不可欠だ」と語った。
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