順天堂大学の河村和弘教授(9日、東京都文京区)

順天堂大学の河村和弘教授らの研究チームは、若くして閉経する「早発卵巣不全(早発閉経)」の治療に、腎臓病や心不全の治療薬「フィネレノン」が有効な可能性があることをマウスを使った実験で明らかにした。早発閉経は様々な原因で、卵子が入った卵胞の発育が止まる病気だが、フィネレノンが卵胞を活性化させる効果があることを見つけた。新たな治療薬となる可能性がある。

研究成果は米科学誌「サイエンス」に掲載された。

早発閉経は40歳未満で閉経する病気で、3.5%の割合で発症するとされる。第三者から提供を受けた卵子で体外受精をする方法や卵巣内に残った卵胞を活性化させる腹腔(ふくくう)鏡手術などがある。いずれも外科的な手術が必要で、体への負担が大きいことが課題だった。

順天堂大や香港大学の研究チームは、既存薬を別の病気に転用する「ドラッグリポジショニング」の手法で、米食品医薬品局(FDA)に承認されている薬剤約1300製品から薬剤を探った。マウスの卵巣細胞を使って卵子のもとが活発に働く効果が見込まれる候補を絞り込み、最終的に飲み薬タイプで安全性が高いフィネレノンを確認した。

卵巣機能が低下した高齢マウスにフィネレノンを経口投与すると、卵子のもとが成長したことを確認し、交配後に出産した。動物試験でフィネレノンの有効性や安全性が確認できたことから、実際に卵巣機能が低下した早発閉経の患者に投与する探索的な臨床試験も実施。卵胞の発育が確認され、その後、体外受精することに成功した。

フィネレノンはナトリウムの再吸収などに関係する「ミネラルコルチコイド受容体(MR)」の過剰な働きを阻害し、臓器や組織の炎症や線維化を防ぐ。今回の研究で、卵巣内で卵子のもとを囲んでいるコラーゲンの産生を抑え、卵子のもとが卵子に成長するのを促した可能性があることが分かった。

河村教授は「従来の研究は『種』である卵子に注目してきたが、今回の研究では『土壌』となる卵巣の環境を整えることが非常に重要だ」と話す。

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