効果が不確かながんの自由診療について、専門医の6割強が自身の患者から相談を受けたことが国立がん研究センターがん対策研究所などの調査で明らかになった。うち7割強は、自由診療を提供する医療機関を患者が実際に受診したと思われると回答。専門医の多くは自由診療に否定的だが、その評価が患者側に適切に伝わっていない実情が浮かんだ。
がん診療では、エビデンス(科学的根拠)が確立した標準治療が公的な医療保険の対象となる。一方、細胞治療や再生医療、遺伝子治療、ワクチン療法など「治療」と称した先端的な技術を自由診療で提供する医療機関がある。効果や安全性が不確かにもかかわらず、高額な医療費がかかったり、緩和ケアを含めた標準治療を受ける機会を奪ったりすることが問題になっている。
研究チームは2024年4~6月、日本臨床腫瘍学会員の医師を対象に自由診療についてのアンケートを実施。がん診療の拠点病院などで腫瘍内科や呼吸器内科を受け持つがん専門医828人から回答を得た。
その結果、患者から自由診療についての相談を1年以内に受けたことがある医師は63・4%だった。相談のあった患者数は1~5人が85・5%で最多。73・0%は実際に患者が自由診療を提供する医療機関を受診したと考えていた。
自由診療に対しては、回答者の76・4%が否定的に評価した。さらに「自身が患者となり、標準治療が選択肢として残っていない場合」に自由診療を選ぶか聞いたところ、73・1%が否定した。
しかし相談をしてきた患者にどのように説明しているかについては、標準治療の選択肢が残っていない場合は63・5%が、残っている場合でも30・9%が「中立的な立場を取る」とした。
専門医の多くは自由診療に否定的であるにもかかわらず、患者の自立性を尊重するなどして中立的に説明する。研究チームは「現状では、専門医の内心の評価と患者への伝達内容に大きな隔たりがある」と分析している。
「専門家は明確な情報発信を」
チームの一家(いっか)綱邦(つなくに)・同研究所研究員は「患者側が専門家の問題視する自由診療に関する正しい知識を得た上で意思決定できていない可能性がある。医学の専門家には、自由診療で行われる医療について明確な情報発信をすることで、患者と一般市民の理解を促進することが期待される」と話した。
成果は国際医学誌「キャンサー・コントロール」に掲載された。和訳要約は研究所のサイトで読むことができる。【荒木涼子、渡辺諒】
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