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人形に練行衆の衣を着せ、食堂作法を再現した展示=2026年2月6日、奈良市登大路町、今井邦彦撮影

 奈良時代の752年から戦争や疫病の中でも途切れることなく続けられ、今年で1275回目を迎える東大寺の法要・修二会(お水取り)。その歴史と神秘を重要文化財16件を含む58件の展示資料で伝える特別陳列「お水取り」が、奈良国立博物館(奈良博、奈良市登大路町)で開かれている。

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 修二会では「練行衆(れんぎょうしゅう)」と呼ばれる僧らが二月堂に2週間こもり、人々が犯した罪を本尊の十一面観音菩薩に懺悔(さんげ)して、世界の平穏や五穀豊穣を祈る。特別陳列では長年、法要で使われてきた器具や、練行衆の衣服、十一面観音菩薩についての資料などを展示する。

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お水取りでくまれた水を二月堂へ運ぶ担台(にないだい)=2026年2月6日、奈良市登大路町、今井邦彦撮影

 今年の展示では、練行衆が1日1回の食事の際の「食作法(じきさほう)」に焦点を当てた。

 練行衆が食堂(じきどう)で身につける重衣(じゅうえ)や袴(はかま)、食堂袈裟(げさ)を人形に着せ、食事のために机と盤を前に座った姿を再現。2012年まで調理に使われていたまな板(江戸時代)や、日によって決まっている献立帳の控え(同、重要文化財)も展示した。練行衆の食事は肉や魚を使わない精進料理だが、煮物や2種類の汁物など、意外に豊富な食材を使っていることも分かる。

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練行衆の日々の食事メニューを記した献立帳=2026年2月6日、奈良市登大路町、今井邦彦撮影

 様々な儀式の様子をとらえた写真パネルのコーナーも。最新の高解像度映像から取られた画像で、灯明のわずかな明かりの中で行われる行の様子を見ることができる。

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修二会の様々な場面をとらえた写真パネルの展示=2026年2月6日、奈良市登大路町、今井邦彦撮影

 今回の展示を担当した市川創(つくる)・主任研究員は、考古学が専門。「こだわりの展示」として、二月堂の周辺で出土した奈良時代の鬼瓦や平瓦、墨書土器を並べ、東大寺創建当時の姿に迫った。

 市川さんは「展示品の中には一部が焼け焦げたものもある。火災や戦争があっても途絶えることなく続けられてきた『不退の行法』であることを感じてもらえれば」と話していた。

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お水取りでくまれた水を参拝者に分け与える香水杓(こうずいしゃく)=2026年2月6日、奈良市登大路町、今井邦彦撮影

 特別陳列は同館西新館で3月15日まで。開館時間は午前9時半から、2月28日までと3月15日は午後5時まで、修二会期間中(3月1~14日)は6時までだが、籠松明(かごたいまつ)が出る3月12日は7時まで。2月24日休館。観覧料金は一般700円、大学生350円、高校生以下および18歳未満、70歳以上は無料。問い合わせはハローダイヤル(050・5542・8600)へ。

東大寺ミュージアムでは日記や経典で学ぶ姿を紹介

 奈良博の特別陳列と同時開催で、東大寺境内の東大寺ミュージアム(奈良市水門町)では、修二会のため二月堂にこもった練行衆が、華厳(けごん)経や法華経の内容を議論する「講問論義」をテーマにした展示「学僧たちの修二会」を開催している。

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「高山寺」の朱印が押された「華厳五教章」=2026年2月7日、奈良市水門町、今井邦彦撮影

 同館では開館15周年を記念し、華厳宗だけでなく真言、律、法相など様々な宗派の教えや思想を学ぶ「八宗兼学の寺」だった東大寺の歴史を紹介するリレー展示を開催中で、今展もその一環。練行衆の日記や使われた経典から講問の姿に迫る。

 展示された練行衆日記によると、室町時代の1413年、講問の講師を練行衆ではない僧が務めることになった。二月堂の内陣には練行衆しか入れないため、手前の礼堂(らいどう)に論議台を設置。これを前例にして練行衆以外の僧が講問の講師を務められるようになったという。

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江戸時代の二月堂の火災で焼損した経典も展示された「学僧たちの修二会」=2026年2月7日、奈良市水門町、今井邦彦撮影

 華厳経の注釈書「華厳五教章」には「高山寺」の印があり、奥付には1520年、別火坊にこもっていた堂司(どうつかさ)(勤行の進行を差配する練行衆)の浄憲(じょうけん)が購入したと書かれている。高山寺の高僧が訓点を記した写本で、講問に向け勉強したらしい。

 3月15日までの午前9時半~午後5時。会期中無休。入館料は中学生以上800円、小学生400円、就学前無料。問い合わせは同館(0742・20・5511)へ。奈良博と東大寺ミュージアムの両展を観覧すると、特製散華(さんげ)(花びら形のお札)がもらえる。

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