リラックスして接することが他者の気分に敏感で警戒心の強い馬との交流を楽しむコツだ VITALII MATOKHA/SHUTTERSTOCK

<長年の通説についに科学的証明が。なぜウマは感情を嗅ぎ分けられるのか──>

馬は人間の不安を嗅ぎ取る能力がある──。こうした長年の通説が迷信ではないことが、フランスの研究チームが科学誌PLOS Oneに先月発表した論文で明らかになった。馬は人間の感情に関連する化学信号を検知し、それが馬の行動や生理に影響するという。

人間と馬の間に、一方の気分がもう一方の気分に影響する「感情の伝染(情動伝染)」が存在することは、既に指摘されていたが、馬が人間の恐怖を嗅ぎ取ることを科学的に突き止めたのは、今回の研究が初めてだ。


馬は周囲の世界を理解するために嗅覚に大きく依存している。人間より嗅覚がはるかに鋭く、微妙な化学的違いを感知できる。

例えば2016年の研究では、馬は味だけでなく栄養素(タンパク質など)に基づいて食べ物を選び、食べた後の体の反応がその後の食物の選択を左右することが分かった。

では、馬はどうやって私たちの恐怖を嗅ぎ取るのだろうか。

人間の感情は生理的変化を伴う。恐怖やストレスを感じると、体や顔や声が変わる。体内ではアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンが分泌され、心拍数が上昇し、汗の成分が変化する。

これらの変化が、人間の体臭の科学的な特徴や性質を変え、気分に関する情報を伝える。

草原で生き残るための術

今回の研究では、馬が人間の感情をにおいで察知するだけでなく、それに反応することが分かった。

被験者が恐怖を感じている時と、喜びを感じている時の脇の下のにおいを綿パッドで採取。比較対照のため、感情とは無関係の体臭も採取した。

綿パッドをナイロン製マスクで馬の鼻に固定してにおいを嗅がせた結果、恐怖を感じている時の体臭で、馬の行動や生理学的に明確な変化が表れた。それまでより警戒心が強くなり、突然の出来事に驚きやすくなり、人間に近づかなくなった。

ストレスを示す最大心拍数も増加。それも、怯えた様子や声を見たり聞いたりせずにだ。

この発見からうかがえるのは、においだけで馬の気分に影響する可能性。馬は人間のしぐさや表情、神経質な動きではなく、人間の体臭から伝わる化学信号に反応していた。

昨年5月の別の研究では、人間が恐怖や喜び、そのどちらでもない感情を表情や声で表現する動画を馬に見せて、馬の心拍数、行動、表情を測定。その結果、恐怖や喜びの表情を見た時のほうが中立的な感情の表情を見た時よりも、心拍数が上昇し、感情が高ぶっていた。

つまり、馬は相手の気分を鼻や目や耳で敏感に察知するということだ。人間が不安を感じているのを相手の姿勢や筋肉の緊張、呼吸パターン、心拍数、動きの変化から認識して反応する。

馬は大きな群れをつくる社会性の被食動物として進化し、開けた草原で生き残るには危険を素早く察知する必要があった。人類による馬の家畜化が始まったのは約5500年前だが、進化の歴史の中では新しいため、馬は今でも警戒心や他者への意識が強い。

こちらがリラックスして接すれば馬も心を許してくれるはずだ。

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Reference

Jardat P, Destrez A, Damon F, Tanguy-Guillo N, Lainé AL, et al. (2026) Human emotional odours influence horses' behaviour and physiology. PLOS ONE 21(1): e0337948. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0337948

M. van den Berg, V. Giagos, C. Lee, W.Y. Brown, G.N. Hinch (2016) Acceptance of novel food by horses: The influence of food cues and nutrient composition. Applied Animal Behaviour Science https://doi.org/10.1016/j.applanim.2016.07.005

Jardat, P., Yamamoto, S., Ringhofer, M. et al. Emotional contagion of fear and joy from humans to horses using a combination of facial and vocal cues. Sci Rep 15, 17689 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-98794-3


Roberta Blake, Professor of Animal Performance Science, Anglia Ruskin University

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