学校(写真はイメージ)=ゲッティ
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 学校に非常識な要求や苦情を繰り返す保護者の存在が社会問題化し、「モンスターペアレント」という言葉が広く使われるようになりました。一方、学校側の安易な決めつけとその後の誤った対応で、双方の対立がより深刻化してしまうケースもあるといいます。スクールロイヤーの春田久美子弁護士(福岡県弁護士会)は冷静に問いかけます。その保護者は本当にモンスターですか――?【聞き手・近松仁太郎】

 ――どのようなケースがモンスターペアレントに当たるのでしょうか?

「モンスターペアレント」の判断は慎重に!
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 ◆例えば、保護者が深夜まで校長室を占拠し、教員らを集めて土下座するよう求めたとしたら、明らかに行き過ぎた行為となりますよね。学校側は「合理性のない理不尽な要求には応じられない」と拒絶すべきです。

 しかし、学校側から寄せられた過去の相談内容を振り返ると、むしろ保護者の言い分の方が正当だと評価できるケースも多々ありました。そもそも保護者も葛藤した上で抗議に至るケースが大半です。学校側と対立すれば、子どもが通学しづらくなるのではないかといった不安はいつも隣り合わせです。それでも強く抗議するのは、我慢に我慢を重ねた上でも怒りが収まらない危険な状況といえます。そして、そうなるまでには多くの場合、怒りをエスカレートさせた明確な原因があるのです。

 ――どのような点に気をつけて対処すべきでしょうか?

 ◆学校側はモンスターペアレントと安易に決めつけず、まずは保護者の主張と怒りの原因を慎重に見極めてください。保護者の言い分を「理不尽」と感じても、担当教員一人で判断せず、経験豊富な先輩や同僚の教員らに相談し、複数の視点で検討しましょう。

 怒りの原因はさまざまです。保護者の相談を学校側が長らく放置し連絡すらしていなかったり、一方的な主張を押しつけていたり。教員側は対応したつもりでも、雑な態度や乱暴な物言いが猛烈な怒りにつながった例もありました。

 いずれにしても冷静に経緯を分析し、学校側に非があれば謝罪し、信頼関係の回復に努めましょう。モンスターペアレントと決めつけてしまうと、おざなりな対応に終始してしまい、解決の糸口も見つかりません。保護者側の言い分には理不尽な主張と、正当な抗議が混在している場合もありますが、その際も同様で、謝罪すべき部分があれば誠実に対応すべきです。

 ――保護者の立場になって考えることがポイントになりそうですね。

 ◆ある保護者は「学校の問題点を指摘したいけれど、モンスターペアレントと言われそう」とためらっていました。私は教員向けの研修会で、ロールプレーイング(役割演技)の手法を取り入れ、保護者の気持ちを体験してもらおうと考えました。教員役と保護者役に分かれ、対応の「良い例」「悪い例」の両方を演じてもらったところ、保護者役となった参加者から「こんな言い方をされたら納得できない」「怒る気持ちがよく分かった」といった感想が寄せられました。立場を変えたことで、さまざまな気づきがあったようです。

 モンスターペアレントという言葉が独り歩きしている面もあるので、冷静な対応を心がけてください。

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