
47都道府県で唯一、鉄道の電化路線がない徳島県で、徳島大生たちが電車を自作して走らせる取り組み「阿波電鉄プロジェクト」が佳境を迎えている。新しい車両用の軌間1067ミリ車軸を安く製造してくれる業者も見つかり、現在はその購入費を含めた資金を確保するための協賛スポンサーを探している。
同県内を走るJR四国各線と阿佐海岸鉄道は電化されていない。プロジェクトは、2016年、当時の鉄道好きの同大理工学部の学生の発案で始まった。大学や企業から活動資金を得ながら先輩から後輩に、代々続けられてきた。
現在のプロジェクトのメンバーは同学部3年の井口歌穂代表(22)を含め11人。それぞれ、ブレーキ▽構造駆動▽運営――の3班に分かれ、プロジェクトを進めている。
プロジェクトでは16年9月、長野県の鉄道展示施設から中古の軌間762ミリの車軸の両側に路面電車サイズの直径450ミリの車輪を1本ずつはめ込んだ輪軸セットを譲り受けることができた。
それを使って当時の学生たちは全長3・2メートル、横幅1・6メートル、高さ3メートルの車両の製作した。定員6人で、モーターや自動車用のバッテリーを搭載し、車体はアルミ材やアクリル板などを使った。21年11月には同県阿南市でのイベントでお披露目された。

22年12月には軌間を、JR在来線を走ることができる1067ミリに広げた車軸の新しい車両の製作を計画した。定員も8人に増やし車体は全長4・5メートル、横幅2メートル、高さ2・6メートルとすることとした。
製作に先立って、車軸を新たに特注する必要が出てきた。今年7月に業者から提示された見積額は400万円と予算に釣り合わなかった。しかし、別の業者からは90万円と格安の見積額が提示された。その業者に発注を決めたが、その他の経費を含めても200~250万円ほどで収まる見込みで、スポンサーの協賛などでまかなうこととした。
台車に乗せる新しい車体部分は既に完成しており、新車両の完成に向け学生たちも張り切っている。構造駆動班の加納凜汰朗さん(18)は「軌間が1067ミリに伸びる分、新しく取り付ける部材のサイズや位置の調整などを始めたい」と語る。
また、ブレーキ班の土井陽菜さん(18)は「新しい車両では、ブレーキを油圧式に変更したい」、運営班の清水知沙紀(ちさき)さん(18)は「学内報告会に向け、資料作成や日々の活動の写真や動画の整理する」とそれぞれ意気込んでいる。
井口代表は「国内の廃線になった線路や、県内外のイベントでの試験走行を行い、将来的には徳島駅構内で走らせたい」と夢を語った。プロジェクトに関する問い合わせは、徳島大イノベーションプラザ(088・656・8236)まで。【山本芳博】
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