
Z世代は何に苦しんでいるのか inspiring.team-shutterstock
<今の若年層のボリュームゾーンであるZ世代には、他の世代が若年期だった頃にはなかった、独特な課題があるようだ>
最新の研究によると、現代の若者の幸福度は中年層よりも低いという。
長い間、研究者たちは中年期には「不幸の山」があると指摘してきた。人は若年期には比較的幸福感を感じるが、中年になるにつれ絶望感が増していき、50歳前後で「不幸感」がピークを迎えるという傾向だ。その後、幸福感は一般的な退職年齢にかけて再び上昇していく。
しかし最近の国際調査によると、Z世代(およそ12~28歳)の不幸度はこの傾向を覆すほどに深刻だ。彼らは他の世代が若年層だった頃と比べて、絶望感や不安を抱える傾向が顕著であることがわかったのだ。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによれば、若年男性の「精神的に健康でない」とする割合は1993年には2.5%だったが、2024年に6.6%に増加した。若年女性も同時期に3.2%から9.3%へと上昇している。
さらに、2023年のギャラップ社による調査では、Z世代で「自分の精神状態が非常に良好だ」と答えた人はわずか15%にとどまった。10年前に若年層だったミレニアル世代の52%と比べて、著しく低下している。
デジタルネイティブ世代ならではの悩み
今回の研究は、米ダートマス大学のデービッド・G・ブランチフラワー教授(経済学)、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)のアレックス・ブライソン教授(定量社会科学)、英財政学研究所(IFS)のシニア・リサーチ・エコノミストのシャオウェイ・シューによるもの。
彼らの論文『若者の精神的健康の悪化と世界的に消えつつある年齢別幸福度の山型パターン』では、アメリカやイギリスを含む44か国の統合データを分析。研究の核心は、中年期における「不幸の山」が消失している点だという。
その代わり、Z世代には年齢を重ねるにつれて不幸度が減っていく「スキー場の斜面のような」形が見られる。これは「全面的に、若年層の精神的健康の悪化によるものだ」と、論文の共著者、ブライソン教授は語る。
Z世代は、ソーシャルメディア(SNS)が当たり前に存在するデジタルネイティブ世代だ。加えて、10代や大学時代の大半を新型コロナウイルスの影響で、自宅に閉じ込められた状態で過ごしてきた。そのため、彼らは他の世代とは異なる独特な課題に直面してきた。
さらに、今年初めの世論調査では、Z世代は全世代の中で平均的な借金額が最も高かった。
不幸をもたらしているのは「スマートフォン」?
だが、Z世代の不幸度の高さの主因として、ブライソンが最も注目しているのは「スマートフォン」だ。
「スクリーンタイムやスマートフォン、高速ブロードバンドの普及が精神的健康に与える影響について、活発な議論が行われてきた」と、ブライソンは英タイムズ紙に語っている。
「画面との接触頻度と精神的健康の悪化には、単なる相関関係だけでなく、因果関係もあるという証拠が次第に増えてきている。もちろん話はそう単純ではないが」
共著者のブランチフラワー教授も研究結果を「世界的な危機」と位置づけ、学校でのスマートフォン禁止や、若者が対面での社交イベントに戻るよう促すといった、速やかな対策を呼びかけている。
「最初はアメリカでこの現象を確認した。人生全体が精神的にとても辛い、と日々絶望を感じる若者、とりわけ若い女性が爆発的に増えている。その後、同じ傾向がイギリスで確認された。今や世界中で見られる現象だ」
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