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<高齢の男性も女性も、テストステロンを高める毎朝のシンプル習慣が、筋力や記憶力を伸ばすだけでなく、意欲や好奇心、そして恋愛力までも呼び覚ます――>
人生のパフォーマンスを高めるには何をすればいいか。
医師の和田秀樹さんは「男性も女性もテストステロンが増えることによって、筋力や判断力、記憶力、意欲、好奇心、挑戦する心、冒険心が向上する。テストステロンや成長ホルモンの分泌と幸せホルモンの1つであるドーパミンの分泌も促す筋トレは意識してプラスするといい。私が毎朝起きたら行っているおすすめの筋トレのやり方を教えよう」という――。
※本稿は、和田秀樹『60歳からこそ人生の本番 永遠の若さを手に入れる恋活入門』(二見書房)の一部を再編集したものです。
女性ホルモン補充療法は大腸がんリスクを下げる
女性が更年期障害の診断を受けたときは、不足している女性ホルモン(エストロゲン)を補うホルモン補充療法をおこないます。
この女性ホルモン補充療法をおこなったところ、ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗などの症状)が軽減し、睡眠障害や関節・四肢痛が、投与前よりも改善されました。
また、骨密度を増加させ、運動機能改善作用、皮膚の表層組織のきめ細かさや皮膚結合組織の弾力性の改善、膣乾燥感、性交痛にも有意な改善が認められています。
欧米では女性の半数近くが受けているほど一般的なホルモン補充療法にもかかわらず、日本では、まだその数は少数派です。理由は、乳がん発症のリスクを心配する人が多いからでしょう。
しかし、最近の大規模調査によって、「女性ホルモン補充療法が、必ずしも乳がんのリスクを増加させるわけではない」という報告が多数、示されています。
2017年の日本産婦人科学会のガイドラインでも、新しいタイプの補充療法は、むしろ大腸がんのリスクを下げるとしています。
更年期の症状から解放されるケースも多い
また、女性ホルモン補充をする前には、入念に乳がんの有無を検査で調べます。引きつづき、投与後も定期的に検査をおこなうので、むしろ定期的に検査をおこなうことで、乳がんによる死亡率が下がるともいわれています。
ただし、前立腺がんの男性がホルモン補充療法を受けられないように、乳がんの既往歴がある場合は治療を受けられないことがありますので、医療機関で確認しましょう。
ホルモン補充療法で不足している女性ホルモンを補ってホルモンバランスを整えることで、更年期の症状から解放される方も多いので、ますます若さと恋活力を高める作用が期待できるでしょう。
とにかく、更年期による不調で日々つらい症状に悩まされているのなら、ためらわずに婦人科に相談してみてください。
また、テストステロンを補う男性ホルモン補充療法が、女性にもおこなわれていることをご存知でしょうか。少量の男性ホルモンを足すことによって、女性にも意欲が出てきて、元気になるのです。
実際に私のクリニックでも、こうした男性ホルモン療法をおこない、元気に仕事ができるようになった女性の経営者やクリエイターの方がいます。
テストステロンを増やす「筋トレ」と「栄養」
このように、男性も女性もテストステロンが増えることによって、筋力や判断力、記憶力、意欲、好奇心、挑戦する心、冒険心が向上します。
先のホルモン補充療法をおこなう以外にも、恋活力が上がる生活習慣を整える方法として、意識してプラスしたいのが、「筋トレ」と「栄養」です。
まず、大きな筋肉を刺激する筋力トレーニングが、テストステロンや成長ホルモンの分泌を促すことがわかっています。幸せホルモンの1つであるドーパミンの分泌も促進されます。
恋活をしてもドーパミンが出るのですが、筋トレでも、ドーパミンが分泌される効果によって、自己肯定感が高まり、それが大きな自信につながります。自信が増すと、さらにドーパミンの分泌が促進され、ポジティブな連鎖が始まります。
すぐに手軽にできる筋トレがスクワットです。スクワットでは、全身の筋肉の約60~70パーセントを占める、下半身の筋肉を鍛えることができます。
私も毎朝、起きたら10回のスクワットをおこないます。「たった10回でいいのですか?」とよくいわれますが、10回でも十分に効果はあります。やり方は、次のとおりです。
① 5秒かけてゆっくり腰を落とす(とにかくできるだけゆっくり)
② そのまま2秒キープする
③ 素早く立ち上がる
これが1セットです。無理のない範囲で、はじめは1回からでもいいのです。自分が無理なくできること、続けられることをやればいいのです。
1日くらい休んでもかまいませんし、1日1回だっていいのです。3日坊主になる人は、完璧主義者が多く、1日でも休んでしまうと、もういいやと投げ出します。ですから、「ゆるく適当に」が、長く続けるコツです。
血糖値を、薬を使わず劇的に下げたシンプルな運動
ただし、腰を落とすとき、ひざがつま先よりも前に出ないように注意してください。ひざに負担がかかって、ひざをいためるからです。不安な人は、いすやテーブルなどにつかまってやると、転倒の危険もなく安全です。
私は以前、血糖値が660mg/dLもあって、重度の糖尿病と診断されました。それが2019年の正月です。正常値は、一般的に食前で約70~100mg/dL、食後で140mg/dL未満とされていますから、かなり危険な数値です。
そこで私は、薬を飲んで血糖値を正常値にコントロールする方法をすぐにはとらず(薬が嫌いなのではなく、低血糖が怖いので)、スクワットと1日1回のんびりぶらぶらと20~30分歩くようにしました。
するとみるみる200台まで血糖値が下がりました。これには自分でも驚きました。今は、朝起きて300を超えたときだけ、薬を飲むようにしています。
薬で無理やり正常値にまで下げると、タイミングによっては低血糖状態になってしまう時間帯が生じます。低血糖になると、頭痛やめまい、胸痛、息切れ、意識低下、倦怠感、うつ症状が現れます。
先ほども述べましたが、もしも車の運転中に意識が朦朧として、けいれんや呼吸困難などの低血糖の発作を起こしたら危険です。高齢者の事故の多くは、それが原因の1つです。
私は血糖値だけでなく血圧も高いのですが、降圧剤で140mmHgまで下げたところ、頭がぼんやりして体がだるくなって、仕事どころではありませんでした。もちろん、このような状態では、恋活も無理です。
筋肉を使うと人生のパフォーマンスが向上する
血圧も血糖値も高めにコントロールすると自分で決めた以上、合併症になっていないか、こまめに検査を受けるようにしています。受ける検査は次の3つです。
● 3カ月に1回:人工透析を避けるために「腎臓の検査」
● 半年に1回:失明など糖尿病網膜症は自覚症状に乏しいため「眼底の検査」
● 5年に1回:「冠動脈の検査」をして血管の詰まりがないかを調べる
さて、スクワットで太ももや臀部、ふくらはぎなど下半身の筋肉を鍛えることによって、男性ホルモンを増やすだけでなく、糖代謝の改善や基礎体力と認知力の向上など、さまざまなメリットがあります。
私は毎朝、インナーマッスルが鍛えられる振動マシンも活用しています。ただ乗るだけでいいのですから、とても便利です。
また、筋トレ後30分以内にタンパク質と炭水化物を摂取すると、筋肉の回復とホルモンバランスの安定化が促進されます。そのため、朝起きたら欠かさず振動マシンに乗って、スクワットをしたら、しっかりタンパク質を含む朝食をとっています。
疫学的なデータでは、筋肉量が少ない人は寿命が短いとされています。日常的な活動量が多い高齢者とそうでない高齢者を比べると、明らかに認知症の発症率が違うという研究結果もあります。
つまり、スクワットと1日1回のんびりぶらぶらと20~30分歩くことで、恋活力が鍛えられるのです。
何歳からでも筋肉は増やせる
また、筋肉をよく動かすと、筋肉そのものからマイオカインという生理活性物質が分泌されます。そのなかの1つがBDNF(脳由来神経栄養因子)です。このBDNFが脳に作用して、脳細胞を活性化し、新しい神経細胞をつくり出す手助けをします。これによって、記憶力や学習能力が向上し、認知症の予防にもつながる可能性があります。
筋トレで筋肉を鍛えれば、たとえ90歳以上になっても、筋繊維の1本1本は太くなります。何歳からでも恋活ができるように、何歳からでも筋肉を増やせるのです。
高負荷トレーニングは、専門的なトレーナーがつきっきりでないと危険ですが、負荷が軽くてもしっかり筋肉はつけられますし、スクワットなら一人で十分できます。
とくに筋トレが高齢者に良いとされるのは、海馬を刺激して、新しい神経細胞を生成させる効果があることです。
筋肉が使われたときに出るホルモンが、海馬を育ててくれるのです。海馬は情報の記憶と処理能力の向上に関わっているため、人生のパフォーマンスが向上する効果が期待できます。
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