
米ペンシルベニア大学は微小粒子状物質「PM2.5」が認知症の一種であるアルツハイマー病に関わるとする研究成果を発表した。脳に有害物質がたまりやすく、認知機能の低下が早まっていたという。汚染地域に1年住むだけでも発症リスクが高まると研究者はみている。
ペンシルベニア大による研究成果は8日、米医学誌「JAMA Neurology」に掲載された。亡くなった認知症患者などの脳試料600件を調べた。あわせて、患者が居住していた場所の大気中のPM2.5の濃度も解析した。
その結果、PM2.5濃度が1立方メートルあたり1マイクログラム(マイクロは100万分の1)増加すると、アルツハイマー病の原因となるたんぱく質の蓄積リスクが19%増えると明らかにした。PM2.5濃度が高い地域の住民は認知機能障害などがより早く現れることもわかった。
研究を主導したペンシルベニア大老化研究所のエドワード・リー共同所長は「汚染レベルの高い地域に1年住むだけでも、アルツハイマー病の発症リスクに大きな影響を与える可能性がある」とコメントした。
PM2.5と認知症の関連を巡っては、米ジョンズ・ホプキンス大学などの研究チームも4日、米科学誌「サイエンス」に研究成果を発表した。アルツハイマー病とは別の認知症であるレビー小体型認知症に着目した。
研究チームは5600万人以上の入院データを分析し、PM2.5との関連を調べた。大気汚染レベルの高い地域の住民はレビー小体型認知症の発症リスクが高かった。マウスの脳を使った実験でも、大気汚染にさらされると細胞死などが起きることを確かめた。
認知症を巡っては加齢や遺伝、生活習慣など様々な発症リスクが報告されている。これらの要因が複雑に絡み合って発症にいたると考えられる。
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