シドニーの動物園でユーカリの葉をかじるコアラ=2008年9月、ロイター

 オーストラリアで、コアラをクラミジア感染から守るためのワクチンが初めて承認された。開発した豪北東部クイーンズランド州にあるサンシャインコースト大は10日、「世界初の試み」として発表した。

 同大の声明などによると、人間にもみられる性感染症のクラミジアは、コアラが感染すると尿路感染症や失明、不妊を引き起こすほか、死に至る可能性もあり、野生コアラの死因の半数近くを占めているという。

 同大のピーター・ティムズ教授は声明の中で、「一部の群れは絶滅に近づいている」と警告。地域によっては感染率が70%に達することもあるという。さらに、これまで唯一の治療法だった抗生物質は、コアラの主食であるユーカリの葉の消化を妨げ、餓死する恐れもあった。

 10年以上かけて開発された今回のワクチンは、1回の投与で繁殖期のコアラが症状を発症する可能性を抑え、研究段階では死亡率が少なくとも65%減少する効果が確認できたという。今後は国内の野生動物病院などで接種が可能になる。

 豪州では近年、森林伐採や山火事の影響でコアラの数が減少し、2022年には一部の州で絶滅危惧種に指定された。今年3月には南東部ビクトリア州で山火事があり、同州政府が700頭以上を上空からの狙撃により「安楽死」させる事案も起きた。【バンコク国本愛】

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