
少子化対策として京都府が開設した「きょうと婚活応援センター」(京都市中京区)が10月10日、10周年を迎える。AI(人工知能)によるマッチングシステムも駆使して、出会いや交際を後押ししてきたが、その成果は――。
2012~14年の府内の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子どもの数)が3年連続で全国ワースト2位となったことなどを受けて、15年10月に同センターは開設された。府内各地でのお見合いイベント開催にとどまらず、プロフィルの書き方講座などのセミナーも実施してきた。
センター長の采尾真友美さんは、20年の国勢調査で、府内の有配偶出生率(結婚している女性が出生する子どもの数の割合)は全国平均並みだったが、女性有配偶率(結婚している女性の割合)は全国平均より顕著に低いと指摘。「まずは有配偶率を上げることが、府内の少子化対策につながる」と分析する。
より相性の合う相手を見つけることができるようにと、センターでは23年3月からAIマッチングシステムを導入。大事にしている価値観と相手に求めている価値観に関する112問に答えると、1カ月につき最大4人までAIが相手を紹介してくれる仕組みだ。また、AIが紹介してくれる人以外にも、月4人までプロフィルを見て、お見合いを申し込み可能となっている。
入会に必要な金額は3000円で、入会以降の月会費は不要。ただし、写真付きの本人確認書類や本籍地のある市町村で発行される独身証明書が必要だ。ただ民間の婚活支援に比べて安価で、行政主導という信頼感などから、センター利用者は増加傾向にある。15年度末時点で700人だった会員数は、25年7月末時点で2684人と3倍以上に増えた。

出会いをサポートするのはAIだけではない。約50人の「婚活マスター」と呼ばれるボランティアも伴走支援してくれる。独身者の結婚意識についてなど専門の講座を受けており、成婚までのよき相談相手になる。開設当時から、婚活マスターとして活動してきた西村真奈美さん(66)は、自身が持つフラワーアレンジメントの資格を生かして、集まった男女で協力しながらリースを作るなど、自身が手掛けるイベントも開催する。
マスターたちが開くイベントは平日の仕事終わりの時間などに、男女2対2から8対8くらいの規模で開かれる。各マスターが工夫を凝らすが、西村さんは1対1で話す前に参加者で円になり、「誰に似ていると言われるか」をまず話して、緊張をほぐすようにするなど、初対面同士でも会話が弾むように心がけているという。
マスターたちの努力もあってか、報告があったカップル数と成婚数は25年7月末時点で、それぞれのべ8897組、1085組となった。
ただ、24年の府内の合計特殊出生率は1・05と過去最低を更新し、全国ワースト5位に。采尾センター長は「出会いは活発になっているが、府の人口からするとまだまだセンター利用者が少ない」といい、「結婚したいと思っていながら、まだ動いていない人にも今後は働きかけていきたい」とアプローチする層を広げる予定だ。
西村さんはこれまでの活動を振り返り、「年収や学歴から相手を選ぶ人、周りに婚活をしていることを隠している人がまだ多い」。その上で「一緒にいて楽しいかどうか、ということからはじめ、婚活していることを周りに伝えると出会いも増える」と話し、「ぜひセンターを利用してほしい」と呼びかける。

同センターでは、開設10周年を記念して、10月4日午前11時~午後4時半、京都産業会館ホール(下京区)で婚活フェスを開催する。対象は20~40歳代の独身男女で定員は350人。詳細は同センターHP(https://pref-kyoto-konkatsu.jp)。応募は9月20日まで受け付けている。【水谷怜央那】
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