(19日、第107回全国高校野球選手権大会準々決勝 山梨学院11―4京都国際)

 両親の都合で2年前に朴材潤(パクジェユン)さんはソウルからやってきた。初めは英語中心のインターナショナルスクールに通ったが、日本語を話せるようになりたいと京都国際中へ移った。3年になった今春、理科の梅本昌登(まさと)先生が中高の吹奏楽同好会を作ったと知り、入った。同好会員は自分1人だった。でも、音楽が好き。「音が、楽器が集まって曲を作るのが面白い」

 昨夏、甲子園の外野席から高校の試合を家族と見た。「太陽がずっとあって、元気な雰囲気」。もう一度、味わいたいと思っていた。

 野球の応援もにらみ、金管からホルンを選んだ。ベースギターの経験はあるが、管楽器は初心者。メトロノームの前に先生と2人で並んでの練習が始まった。

 「Lemon」「釜山港へ帰れ」。吹いてみたい曲を伝えると先生はホルン用の楽譜に起こしてくれた。7月に入るころだったか、「大きな古時計」を吹ききれた。「上手になったね」。その言葉がうれしかった。

 楽譜には鉛筆で0、0、1、2、1……。読み取りやすいように数字を書き込んでいる。準々決勝から加わった2人目の同好会員、高校2年の北村天音(あまね)さん、そして友情応援の星林(和歌山)、京都外大西の吹奏楽部とともに、総勢約80人でアルプス席から奏でた。「今日、一緒に甲子園にいられることが楽しい」

 吹いているときは譜面からまだ目が離せない。それでも、八、九回、反撃に出る選手たちを見たい。長い音のときにグラウンドに目をやった。

 試合終了のサイレンが鳴った。立ち上がって、静かに拍手を送った。来年2月に帰国する。「来てよかった。日本にはこういうところがあると伝えたい」。日本での最後の夏を、力いっぱい吹き終えた。

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