日本高野連の元事務局長が語る「高校野球半世記」
現役を引退したら、高校生を指導したい。プロ野球選手たちのそんな願いを実現するには、プロ野球と学生野球が歩み寄る必要がありました。
日本学生野球憲章では、「プロ野球選手、プロ野球関係者、元プロ野球選手および元プロ野球関係者は、学生野球資格を持たない」と定められています。学生野球資格を回復しなければ、原則として高校生を指導できません。
高校野球では1984年に元プロが教諭10年で指導者となれる「教諭特例」が設けられました。この期間は94年に5年、97年に2年と徐々に短縮されましたが、非常にハードルの高いものでした。
2012年にプロ野球側からの要望があり、学生野球資格回復の緩和に向けた協議会が発足しました。ただ、過去にプロ側による選手の引き抜きや金銭供与の問題があったため、学生野球側から慎重な声は多かった。
研修制度を作って、部活動の指導に必要なことを学ぶ時間を作りました。まず、なぜプロと学生野球が断絶することになったのかを、プロ野球機構から参加者に説明するよう求めました。自ら立ち返ることが、同じ過ちを起こさないことにつながると思ったからです。
高校野球の指導者は、技術を教えるだけではありません。今後の人生に生かせることを教えてあげてほしい。そんな思いを込めながら、研修の資料を作りました。
13年6月に「学生野球資格の回復に関する規則」が大幅に改正されました。研修を受け、指導者養成講座や適性検査を経れば、元プロ選手は高校生の指導ができるようになりました。
現在、全国の高校へ指導に回っているイチローさんも、もちろんこの研修を受けました。講義室の最後列に座り、静かに研修を受けていたのを覚えています。
これまでに2000人以上が資格を回復しました。元プロ選手の知識や経験は、生徒にとって大きなモチベーションにつながります。それを生かす方法はないものかと学生野球関係者で真剣に考えた結果でした。
研修を経て、現場に立つ指導者たちは高い意識を持ち、制度を守ろうとやってくれています。回復制度が始まって10年余り、プロアマ間で協議した理念を揺るがすようなことは起きていません。
近年は海外の大学や球団で、野球を続ける選手も増えてきました。彼らの体験も生かし、プロと学生野球とで築いてきた健全な関係を維持したい。大リーグを含めた関係各所と連携していく必要があると思います。
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