来年3月に行われる第98回選抜高校野球大会。その出場校を選考するうえで重要な参考材料となる秋季近畿大会の準々決勝が10月26日に3試合、27日には、25日の雨天の影響で継続試合となっていた1試合が行われてベスト4が出揃いました。
滋賀学園 対 近江
センバツ大会の近畿の出場枠は6校(優勝校が明治神宮大会を制覇すれば7校)。勝利すれば、甲子園がぐっと近づく重要なベスト8の激突だけに、3試合が開催された26日には、会場となったさとやくスタジアムに大勢の観客がつめかけました。
雨の中始まった26日の準々決勝。第1試合は、1回戦で粘る乙訓(京都)を振り切った滋賀学園と市尼崎(兵庫)に快勝した近江の対戦。滋賀県大会隼決勝で激闘を演じた両チームが、この試合も負けず劣らずの大熱戦を繰りひろげます。
滋賀大会でも好投した近江のエース・上田健介投手が力強い投球で滋賀学園打線を抑えると、滋賀学園の背番号「1」を背負った土田義貴投手も力投。毎回のようにランナーを背負いながらも粘り強いピッチングで得点を許しません。
均衡を破ったのは滋賀学園、4回、3番島尻琳正選手、4番吉森爽心選手の連続ヒットでチャンスをつくると、1アウト2塁3塁から6番中野壮真選手のショートゴロの間に島尻選手がホームイン、1点を先制します。
一方の近江も6回に反撃、4番箕浦太士選手、5番杉本将吾選手の連続ヒットから1アウト2塁3塁のチャンスをつくると、ピンチヒッターの猿田怜成選手が詰まりながらもセンター前へタイムリーヒット、1対1の同点に追いついて、なおも1アウト1塁3塁と絶好のチャンスをつくります。しかし、土田投手の粘り強く、強気な投球の前に後続が打ち取られて勝ち越しにつなげることができません。
滋賀学園の山口達也監督が「今までで一番いい出来だった」と語った土田投手、9回表にも2アウト満塁のピンチを招きますが、ここも強気にインコースを攻める投球で、近江の3番杉浦憂志朗選手を打ち取って勝ち越しを許しませんでした。
そして、9回裏、5回以降は、近江の上田投手に完全に抑え込まれていた滋賀学園打線が、土田投手の力投に応えます。1アウトから島尻選手のツーベースを足掛かりに満塁とチャンスをひろげると、6番中野選手が、三遊間を破るサヨナラタイムリーヒット。滋賀学園が、延長タイブレークの末に敗れた滋賀大会の雪辱を果たして、ベスト4進出を決めました。
大阪桐蔭 対 天理

(画像:大阪桐蔭・川本晴大投手)
続く第2試合は、1回戦で、前評判の高かった市和歌山の丹羽涼介投手を攻略して快勝した大阪桐蔭(大阪)と、彦根東にコールド勝ちをおさめた天理(奈良)の対戦。序盤から大阪桐蔭打線が、天理の先発・長尾亮大投手に襲い掛かります。
1回、2番中西佳虎選手が13球粘ってフォアボール。立ち上がりで制球に不安が残る長尾投手から投球のリズムを奪うと、3番内海竣太選手がレフト前ヒットで続きます。さらにフォアボールで満塁とチャンスひろげると、ツーアウトからパスボールと1点を先制した後、7番黒川虎雅選手、8番中島齊志選手が連続のタイム―ヒット、あっという間に5点を奪いました。
西谷浩一監督が、「長尾投手も、(市和歌山の)丹羽投手に匹敵するぐらいの好投手。とにかくつないで対応していこう」と話をしていたという大阪桐蔭。彦根東戦では、6回途中まで3安打に抑える好投を見せていた長尾投手を、さすがという集中打で攻略しました。
その後も大阪桐蔭の勢いは止まりません。3回には、さらに1点を加えると、ツーアウトからランナーひとりを置いて、1番藤田大翔選手が左中間へ豪快なツーランホームラン。8対0として試合の流れを決定づけました。
投げては、大事な先発マウンドを任された1年生の川本晴大投手が、大量点をバックに力強いピッチング。「緊張はしたが、1回、1回全力で抑えるという気持ちで思い切って投げ込むことができた」と語ったように、2回以降は、長身から投げ下ろす鋭い速球と大きな変化球を武器に天理打線に付け入るスキを与えません。6回を2安打無失点に抑える投球でコールド勝ちに結びつけました。
大坂桐蔭・中西選手が「去年の秋も、今年の夏も敗れて1年間甲子園から遠ざかっている。甲子園に行きたいという強い気持ちが、一人一人の集中力や粘りにつながっている」と語った大阪桐蔭。10対0の完勝で天理を下して、ベスト4進出です。
神戸国際大付 対 橿原学院

(画像:神戸国際大付・宮田卓亜投手)
第3試合は、1回戦で金光大阪を接戦の末に振り切った神戸国際大付(兵庫)と京都1位の龍谷大平安に逆転勝ちを収めた橿原学院(奈良)の対戦。
試合開始から、神戸国際大付の先発、宮田卓亜投手が、素晴らしいピッチングをみせます。投球を受ける井本康太捕手が「宮田のストレートがはしっていたので、どんどん(まっすぐで)押していこうと思っていた」と振り返ったように、高めのストレートを決め球に、橿原学院打線から三振の山を築いていきます。6回まで1人のランナーも許さず9奪三振、パーフェクトピッチングで試合の流れを引き寄せます。
打線が宮田投手の好投に応えたのは3回、2アウト1塁3塁から6番中西孝介選手のタイムリーヒットで1点を先制します。しかし、4回から登板した橿原学院・吉村俊紀投手の粘り強いピッチングの前に、なかなか追加点を奪うことができません。1対0のまま、試合は終盤の7回に突入します。7回もパーフェクトピッチングを続けた宮田投手、その裏、ようやく神戸国際大付属打線が吉村投手をとらえました。1アウト1塁2塁のチャンスに、ピンチヒッターの石原悠資郎選手が、センターオーバーの2点タイムリーツーベース。
「コーチからチームの救世主になれと激励されて打席に入った」と語った石原選手、期待に応えるバッティングで貴重な追加点をもたらしました。
パーフェクトまで残り2イニング。この後に一段と激しくなる雨、その雨が宮田投手に立ちはだかります。足元がぬかるんで不安定になる中、8回先頭の4番川井陵馳選手に対してコントロールが乱れてフォアボール、はじめてのランナーを許してしまいました。それでも、後続を打ち合ってこの回も無失点、ノーヒットノーランは継続したまま9回に突入します。9回に入ってさらに激しさをます雨、その中でも宮田投手は冷静でした。
グラウンド状態を考えると、ぼてぼてのゴロでも内野安打になる可能性が高い中、橿原学院打線につけいるスキを与えません、フォアボールで出塁こそ許したものの2つの三振を奪って2アウトまでこぎつけます。あとアウト1つで偉業達成。緊張感が漂うこの場面でも、神戸国際大付の選手たちは、集中していました。そして、橿原学院の2番岸本惺羅選手の打球はセカンドへ、この打球をセカンドの谷口慎治選手はしっかりと捕球するとボールが滑りやすいファーストへの送球を避けて、2塁のベースカバーに入ったショートの西谷太一選手へ丁寧なトス、見事にノーヒットノーランを達成しました。
宮田投手の力投だけでなく総合力の高さも見せつけた神戸国際大付、選抜大会出場に大きく近づくベスト4進出です。
智弁学園 対 東洋大姫路

(画像:智弁学園・逢坂悠誠選手)
準々決勝のもう1試合は、智弁学園(奈良)と東洋大姫路(兵庫)の実力校同士の激突。雨の影響で、智弁学園が4対0とリードした5回終了時点から継続試合となったこの試合。6回以降の再開が1日空いたことで大きく試合が動きます。
10月25日に行われた5回までの対戦では、智弁学園のエース・杉本真滉投手に抑え込まれていた東洋大姫路の打線、再開された27日の対決では、積極的なバッティングでチャンスを作り出していきます。7回ツーアウトながら1塁2塁のチャンスをつくると、3番峰松紘大選手が右中間を破る2点タイムリーツーベースヒット、「25日にバッターボックスで杉本投手の投球を1度体験したことで、しっかりとイメージが残った中で、1日(10月26日)たっぷり練習することができた」と語った峰松選手、的確に杉本投手の投球を捉えました。これで勢いに乗った東洋大姫路、8回には、2アウト満塁のチャンスをつくると、押し出しのフォアボールと一塁手の捕球ミスの間に3得点、智弁学園の守備の乱れをついて、あっという間に5対4と逆転します。
しかし、さすがは智弁学園、ここから底力を発揮します。その裏1アウトから1塁3塁とチャンスをつくると、6番大西蓮太郎選手が3塁線へ絶妙のバンド、素早く反応した3塁ランナーが送球より一瞬早くホームイン、中断前の4回から登板して、この日も好投を続けていた東洋大姫路の三上颯真投手から、ようやく1点をもぎ取り5対5の同点に追いつきました。
同点のまま試合は9回へ、東洋大姫路は、先頭バッターがフォアボールを選んで出塁します。この場面で東洋大姫路・岡田龍生監督の指示は送りバント。
しかし、ここは杉本投手が抜群のフィールディングで素早く打球を処理してセカンドへ送球、進塁を許しません、続く6番渡邊裕太選手も送りバントを試みますが、ここでも杉本投手が素早い動きでダブル―プレーを成立させてピンチを脱出します。
「投球内容以上に、チームに勝利を呼び込むのがピッチャーの役目。9回は、去年から背番号『1』をもらっている意地を見せることができた。いいプレーでゲームの流れを引き寄せることができた」と振り返った杉本投手。その言葉どおりチームに勢いを呼び込みます。
9回裏、智弁学園は先頭バッターがフォアボールで出塁すると、1アウトから2番志村叶大選手が送りバント。こちらは確実に決めて、ランナーをセカンドに進めます。続く3番角谷哲人選手がヒットでつないで、2アウト1塁3塁、サヨナラのチャンスで4番逢坂悠誠選手に打席がまわります。
「8回は自分のエラーでチームに迷惑をかけたので、決めてやるぞという強い気持ちで打席に入った」と話した逢坂選手、自らのバットで勝利を呼び込みました。
思い切り振り抜いた打球は、ファーストへの強襲ヒットなって、3塁ランナーがホームイン。センバツ出場を大きく引き寄せる勝利、智弁学園が東洋大姫路をサヨナラで撃破して、ベスト4進出を果たしました。
近畿大会準々決勝は、滋賀学園、大阪桐蔭、神戸国際大付、智弁学園の4校が勝利してベスト4に進出。智弁学園対滋賀学園、大阪桐蔭対神戸国際大付の準決勝は、11月2日(日)に行われます。
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