残り約50m、追いすがるポーランド選手が視界に入った。「抜かれてたまるか」。力を振り絞って加速した山田は、トップを譲らず両腕を広げてゴール。自身のデフ日本記録も更新し「最高に気持ちいい」と、会心の金メダルに酔いしれた。東京デフリンピック第5日、陸上男子400m。日本が自国初開催で最初に手にした「金」だ。
スタートのランプ点灯と同時に飛び出し、日の丸をイメージして赤く染めたという髪をなびかせて先行。胸に秘めていたのは、3年前に味わった失意だ。2連覇を狙った前回2022年大会の200mは、新型コロナウイルスの影響で日本選手団の辞退が直前に決定。悔しさと怒りに「こんな理不尽なことがあるのか」と身を震わせた。
「聞こえない子たちが見ている。前を向かないと」と、昨季から練習に本腰を入れて鮮やかに復活を遂げた。手話で「あの時の苦しみが、この結果につながった」。
大会公式ポスターにも起用された日本の顔だ。21日には2大会ぶりの王座を狙う本命の200m予選が控える。「もう一度、金メダルを取る」と力強く誓った。(共同通信)
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