ことしも盛り上がった聖地

ことしの夏の甲子園は、左右の2年生投手の好投で勝ち上がってきた沖縄尚学が、決勝でも持ち味の「守り勝つ野球」を貫いて日大三高に勝ち、初優勝を果たして幕を閉じました。

日本一に輝いた沖縄尚学の末吉良丞投手や新垣有絃投手、準優勝だった日大三高の田中諒選手など、数々の選手が活躍して熱戦を繰り広げ、甲子園球場には、あわせて72万人を超える観客が詰めかけて、大きな盛り上がりを見せました。

【詳しくはこちら】沖縄尚学が優勝 夏の甲子園は初

暑さ対策の「2部制」 見えてきた課題

その陰で大会本部が苦心してきたのが、近年、厳しさが増してきた猛暑への対策です。

朝8時から始まった試合

ことしの大会では、日中の暑さを避けるため、午前と夕方に分けて試合を行う「2部制」をさらに拡大し、1日4試合の日にも適用しました。

こうした中で「時間との戦い」も生まれてきました。

【大会本部が決めていた時間】
▽午前に行う2試合の時間帯を、午前8時から最大午後1時45分まで。
▽夕方の時間帯を、午後4時15分から原則として午後10時すぎまで。

この時間をすぎた場合は「継続試合」として、翌日以降に再開することにしていましたが、選手や応援団に負担がかかるうえ、その後の日程も厳しくなるため、「継続試合」はできるだけ避けたいという本音もありました。

結果として今大会中に「継続試合」が適用されることはありませんでしたが、大会4日目には、夕方の最初の試合が雨による中断で長引き、次の試合が始まったのは午後7時49分。

終了が午後10時46分に

結局、両チームの合意のもとで午後10時46分まで行われることになり、夏の甲子園で記録が残されている中では、もっとも遅く行われた試合となりました。

大会本部の担当者
「2部制では、午前と夕方の限られた時間に、それぞれ2試合を消化しなければならない。雨が降ると試合が長引いてしまうため、雨天が予想される場合は早めに中止と判断せざるを得なくなり、その後の日程も厳しくなってしまう。大会を運営するうえで、2部制は雨に弱いことがわかった」

「2部制」には一定の効果も

その一方で、ことしの大会の期間中に熱中症の疑いで処置を受けた選手の人数は、去年ののべ58人から、のべ24人と大幅に少なくなりました。

去年とは人数の数え方や気温が異なるため、単純に比較することはできないとしたうえで、担当者は次のように話していました。

大会本部の担当者
「2部制の効果は一定程度はあったと考えている。ただ、厳しい暑さの対策を2部制だけで解決するのは難しいとも思っている。さらに対策を検討していきたい」

真夏の8月に、屋外の甲子園球場で行われる大会の暑さ対策を、どのように進めていくかは、道半ばと言えそうです。

SNS時代の対応は

今大会はまた、スマートフォンやSNSなどの普及に伴う社会情勢の急激な変化への対応を、考えさせられる機会にもなりました。

広陵高校 堀正和校長が出場辞退を表明(8月10日)

広島の広陵は、複数の野球部員が、下級生に暴力をふるったことをめぐる一連の問題を受けて、2回戦を前に出場を辞退しました。

この問題では大会が開幕する前後に、部内で暴力があったという情報がSNSで投稿されて拡散されました。

広陵が1回戦に出場した前後にも、2年前に元部員が監督や一部の部員などから暴力や暴言を受けていたという別の情報が投稿され、こちらも急速に広がっていきました。

辞退のあとに記者会見を開いた日本高校野球連盟の寶馨会長は「1回戦の当日に新たな事実が発覚したので、試合は行わざるを得なかった」と述べ、大会本部としても、対応に苦慮していた実情を明かしました。

寶会長は、閉会式のあいさつでも、暴力は認めないという姿勢を改めて強調したうえで「このような事態に至った経緯をしっかり検証し、より適切な対応策を検討していく」と述べました。

SNSなどを通じて、めまぐるしいスピードで広がっていくさまざまな情報に対し、高校生の大会を運営する側として、今後どのような体制を構築し、そのつど判断をしていくべきなのか、難しい対応を迫られることになりました。

伝統をつなぐために

こうした中、優勝した沖縄尚学は、好投する2年生ピッチャーに対し、先輩の3年生たちが「なんとか助けたかった」と話して、必死にプレーする姿が印象的でした。

日大三 三木有造監督(右)

そのチームと決勝で対戦した日大三高の三木有造監督は、試合のあとに次のように話していました。

三木有造監督
「うちのチームは上級生と下級生が互いに尊敬し合う関係が長く続いてきた。それが準優勝の大きな要因になったと思う」

100年以上の伝統があり、全国の高校球児の憧れの舞台となっている夏の甲子園。これからも、その伝統を守りながら、後の世代に引き継いでいくためにも、新たな取り組みが求められています。

【NHK特設サイト】夏の甲子園2025

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