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京都成章―桐蔭学園 京都成章の選手たちに飲み物を渡す工藤資己(左)=大山貴世撮影

 大阪・東大阪市花園ラグビー場で7日にあった第105回全国高校ラグビー大会の決勝で、初優勝をめざした京都成章は桐蔭学園(神奈川第1)に15―36で敗れた。京都成章の主将・笹岡空翔(くうと)(3年)は一度も花園の芝を駆けることなく、高校でのラグビーを終えた。

 ポジションはフルバック(FB)。9月の練習中だった。左足に違和感が走る。「やってしまったか」。2年生のときは逃した花園出場へ向けて、「けがなしな!」と仲間と誓った矢先だった。

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松葉杖姿で練習を見つめる、京都成章の主将・笹岡空翔=2025年11月25日、京都市西京区、土井良典撮影

 左ひざの半月板損傷。部員たちには言えなかった。けが続きの高校生活だったからだ。1年生のときは右ひざの故障。3年生の春は右ひじを脱臼した。そこから復帰して、まだ約2カ月しかたっていない。「ほんまに3年間、全然ラグビーをしてなかった」

 最初に打ち明けたのは、ロックの工藤資己(よしき)(3年)だった。家が近く、何でも語り合える親友は控え選手だが、自分が練習休みの日でも遠征帰りのAチームのために学校まで来て荷下ろしを手伝ってくれる。いつもチームのことを第一に考えてくれていた。

 悩む笹岡に工藤は言った。

 「俺らは『また、けがか』なんて思わないから。またみんなでがんばろう」

 「空翔に日本一を」を合言葉にしたチームは、2大会ぶりの花園出場を決め、大舞台でも勝ち上がっていく。

 笹岡に背番号はない。黄色と青色のジャージーも着られない。黒いトレーニングウェアの左ひざにはサポーター。練習も松葉杖で体を支えながら出た。試合ではベンチ前に立った。

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京都成章―桐蔭学園 相手の守備位置を確認する京都成章の笹岡空翔主将=大山貴世撮影

 「どんどん言うべきことは言った」。陣形の乱れやアタックの狙い目を仲間たちに助言した。

 決勝は、5―5の同点で前半を終えた。ハーフタイム。自分の代わりにFBに入る後輩を呼び寄せた。緊張から声が出ていないと感じたからだ。背番号が15のFBは大抵、自陣の一番後ろにいる。「全体を見られる位置。お前の声がなくなったら負けてしまうぞ」と背中を押した。

 後半、桐蔭学園に突き放されて悲願の初優勝とはならなかった。それでも、「みんな逆境を乗り越えてきた。だから胸を張りたい」と笹岡は言う。

 けが続きだった高校生活。思い残すことは山ほどある。何より、もっとラグビーがしたかった。汗と泥にまみれて喜び、悔しがりたかった。

 「大学ではけがをしない体をつくって、ラグビーをし続ける」。苦しいときに支えてくれた頼もしい仲間たちに、いつか、芝を駆ける姿を見せたい。

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京都成章の主将・笹岡空翔は、松葉杖姿でも練習中に声を張る=2025年11月25日、京都市西京区、土井良典撮影
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決勝直前の練習でサポートに回る京都成章・笹岡主将=2026年1月7日、東大阪市花園ラグビー場、土井良典撮影

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