熱戦が繰り広げられた第107回全国高校野球選手権大会は、沖縄尚学が夏初制覇を成し遂げ幕を閉じた。
2年生の活躍が目立った今大会。中でも存在感を見せたのが4強入りを果たした山梨学院の“二刀流”菰田陽生(こもだ はるき)だ。準決勝では惜しくも沖縄尚学との接戦に敗れ決勝進出は逃したものの、初戦から全4試合で先発を務め防御率1.62、バッティングでは打率.467、6打点と投打で結果を残した。
しかし、準決勝では右肘を痛めるアクシデントで1回16球で降板した。来秋ドラフトの目玉とされる菰田の右肘の状態が心配されていたが、検査の結果「軽度の右肘筋損傷」。1週間程の安静で投球再開となる見込みだ。
軽度で済んだ菰田について、納得のいく驚愕エピソードを以前の取材で山梨学院の吉田洸二監督から聞いていた。
1ヶ月に1回メディカルチェックを行っているという菰田。監督は「ちょっとこれはびっくりしたんですけど」と前置きし、1年生の秋冬頃のある日、いつも通り検査が終わると診療医から「菰田くん大変だったね。だいぶもう治ってきているよ」と一言。何を言われているのか分からなかった菰田は「どういうことですか?」と質問すると「足、疲労骨折。これ、ひどかったね」と衝撃の事実を知らされた。しかし、当の本人は足を疲労骨折していたことに気づいていなかったのだ。「みんなで大笑いしたんですけど、検査に行った時にはもうほぼ治る寸前で、素晴らしく丈夫な選手ですね」と吉田監督は衝撃の“菰田伝説”を笑顔で話してくれていた。今回の右肘筋損傷の診断も、丈夫な体が所以の軽症に済んだのかもしれない。
そんな新怪物・菰田に準決勝敗退直後、今大会を振り返ってもらった。「ベスト4で終わってしまったということでまだ3年生と一緒にやりたかったし、それができなくて悔しい」と肩を落とし、大会前・大会期間中にも「3年生は最後の大会、2年生で出させてもらっている」と頻繁に口にし、常にチームのことを考えていた菰田。
沖縄尚学との準決勝では前日に先発を告げられていた。「決勝がかかっている試合ってことで臨んだんですけど、1球投げて(右肘の内側に)違和感あるなみたいな感じで」と1回で緊急降板した経緯を明かし「本当は5回まで投げる予定でしたが、まだ早く代えていただいたので重症ではないと思う」と痛めた直後の右肘の状態について話していた。
大いに成長を遂げた今大会。身長194センチ・体重100キロを活かした規格外のスケールで聖地を沸かせた。「周りからの注目もあったけど自分のプレースタイルができた」と手応えもつかんだ菰田は、「甲子園の舞台で試合ができて嬉しい気持ちもありますけど、甲子園でまた借りを返したい 、次は自分たちが主役になる」と聖地帰還を見据え、リベンジを誓った。更なる高みを目指す未完の大器は「まだまだ全然力不足、実力も足りない中で今大会投げさせてもらって色々課題もある中で、次、甲子園に戻ってきたら成長した姿を見せていきたい」と目を輝かせた。
今後は新チームの中心選手として、9月6日に開幕する第78回秋季関東地区高校野球山梨県大会で大会史上初の5連覇を目指す。
■菰田 陽生(こもだ はるき)2008年12月21日生まれ。194センチ、100キロ。右投げ右打ち。千葉県御宿町出身。御宿小学校(御宿少年野球クラブ、九十九里リトルリーグでプレー)〜御宿中学校(千葉西リトルシニア所属)~山梨学院高校。憧れは大谷翔平。自己最速152キロ、高校通算25HR。
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