
日本鉄鋼連盟の今井正会長(日本製鉄社長)は25日開いた記者会見で、中国政府が足元で鋼材生産を引き締めようとしている動きについて「国の方で問題提起がなされるようになっているのは前進だが、強制力を伴う政策にはなっていない」と指摘した。中国に対し「我が国からも実効性のあるアクションを求めていくべきだ」と述べた。
トランプ米政権の関税政策については「(鉄鋼の)派生品に対して課税されるなどまだ不透明な部分が多くあるので、引き続き注意する」と話した。
日本政府がニッケル系ステンレス鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板などについてアンチダンピング(反不当廉売、AD)課税の調査を始めた件については「AD関税が発動できるかは調査結果を待たなければならないが、我が国の通商政策としては鉄鋼に限らず非常に大きな一歩なので期待している」とした。
将来の鉄鋼業で必要となる、二酸化炭素(CO2)を排出しない「グリーン水素」の調達については「日本に水素を運ぶサプライチェーン(供給網)のコストが想定以上にかかる。(グリーン水素製造のため)国内で安価な電力が安定的に手に入るかがますます重要になる。水素についてはなかなか厳しい状況だ」と指摘した。
今井氏は同日、日本製鉄社長の立場で買収した米鉄鋼大手USスチールの状況についても説明した。同社の生産拠点の稼働停止計画を保有する「黄金株」に基づき米政府が阻止したことには「国家安全保障の取り決めや黄金株の権限に関するところは少し見解が分かれうる」と述べた。その上で「(米国)国内の生産拠点や雇用を守るという政策をトランプ大統領が強く進めている一環ではないか」との認識を示した。
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