米オープンAIのように未上場のままプライベート(未公開)資金の調達によって規模を拡大しているスタートアップが増えている(ロイター=共同)
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

スタートアップ業界では資金がこれまでにないほど集中している。世界で最も企業価値の高いスタートアップはAI分野と2つの国に集まっている。

世界の企業価値の高い未上場企業トップ50社のうち、米国勢と中国勢が計86%を占める一方、AIスタートアップは40%に上る。こうした企業は産業界に変革をもたらし、一部は上場している競合を上回る評価額を得ている。

米オープンAI(OpenAI)の企業価値は約5000億ドルに達する見通しとも報じられており、他のどのスタートアップよりも巨大テックに近づいている。一方、現在のトップ50社の合計企業価値は米エヌビディアの時価総額4兆3000億ドルの半分に満たず、上場テック大手のスケールの大きさを浮き彫りにしている。

CBインサイツのデータに基づいて企業価値の高い未上場企業50社を分析し、未公開市場で価値が生み出されている分野を調べた。50社の主なパターンは以下の通りだ。

企業価値の高い未上場企業50社のポイント

米国勢と中国勢が世界のユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)を支配し、企業価値上位50社の計86%を占めている。上位50社のうち最も多いのは米国の35社(70%)、2位は中国の8社(16%)で、技術革新と資本形成が両国に集中していることを示している。残りの6カ国(オーストラリア、フランス、ドイツ、シンガポール、スウェーデン、英国)からはそれぞれ1〜2社がランクインしている。

AI企業は上位50社の4割に上る。市場が経済価値の主な推進力としてAIを信頼していることがうかがえる。こうした企業はオープンAIや米アンソロピック(Anthropic)など基盤モデルを開発する大手から、防衛システム(独ヘルシング=Helsing、米アンドゥリル・インダストリーズ=Anduril Industries)のようなアプリケーションを手掛ける専門企業まで多岐にわたる。

各社は潤沢なプライベート(未公開)資金の調達により、上場を遅らせても規模を拡大し続けられるようになっている。スタートアップの創業から上場までの期間は平均16年と、ほんの10年前に比べて4年延びている。米データブリックス(Databricks)は最近のシリーズKラウンド(調達額10億ドル)で企業価値が1000億ドルに達し、上場している競合の米スノーフレイクの時価総額を超えた。一方、中国の字節跳動(バイトダンス、企業価値3000億ドル)の2025年1〜3月期の売上高は米メタを上回った。潤沢なプライベート資金の調達に加え、従業員などがセカンダリー(2次流通)市場で持ち株を売却できるため、企業は上場しなくても大きく成長できるようになっている。

セカンダリー取引が企業価値の上昇を後押ししている。ベンチャーキャピタル(VC)の出資を受けている企業のセカンダリー取引の件数は、7四半期連続で前年同期を上回った。オーストラリアのキャンバ(Canva、企業価値420億ドル、24年の320億ドルから上昇)や英レボリュート(Revolut、同750億ドル、450億ドルから上昇)などが最近セカンダリー取引を実施したほか、企業価値5000億ドルともいわれるオープンAIも近く未公開株103億ドル分をセカンダリー市場で売却する。スタートアップは未上場にとどまる期間が長くなり、セカンダリー取引により流動性と新たな企業価値の評価を得ている。

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