全国で人気の「ロピア」の商品を返礼品にした福岡県春日市のPR画像=市提供

 福岡県春日市は29日、ふるさと納税の返礼品として、全国で食品スーパーを展開する「ロピア」(川崎市)の冷凍ピザや精肉などの人気商品を10月1日から加えると発表した。市によると、ロピアの商品が返礼品になるのは全国初で、寄付集めに苦戦する市の期待も高い。とはいえ、ロピアの本社もなく、食材の産地でもない春日市が、返礼品にしても大丈夫なのか。

 ロピアは1971年、精肉店として創業。「ロープライスのユートピア」をうたい、多彩な商品を大容量で安価に取り扱うことで近年、人気を集めている。全国と海外に計138店を展開し、九州には2023年に進出した。

福岡県春日市

 春日市が返礼品とするのは、味付け牛タン750グラム▽牛プルコギ1・7キロ▽味付け牛サガリ(ハラミ)1キロ▽豚ロースみそ漬け10枚▽冷凍ピザマルゲリータ10枚▽人気の冷凍ピザ3種各3枚――の6品。寄付額はいずれも1万円で、ふるさと納税の各サイトで10月1日以降、順次受け付ける。

 市によると、きっかけは市の発案だった。

 ふるさと納税を巡っては、全国の自治体が魅力的な返礼品で寄付の獲得を競っている。ただ、福岡市のベッドタウンで大きな工場などが少ない春日市は近年、苦戦を強いられてきた。

 春日市への寄付は18年度に約12億5000万円とピークに達した後、6年連続で減少。24年度は約2億6000万円と18年度から約10億円も激減した。市民が他の自治体に寄付をする税収減との差し引きで、ふるさと納税全体で赤字となれば、市財政にも悪影響を与えかねないと市は危機感を抱いていた。

ふるさと納税による福岡県春日市への寄付額

 こうした中で着目したのが、福岡県内の6店のうち春日市内で2店を構えている、ロピアの「全国への強い発信力」だった。

 ただ、生まれ故郷などの地域を応援する制度の趣旨を踏まえ、返礼品は「地場産品」という国の基準がある。本社が川崎市で、肉などの原料も他産地のロピアの商品は一見、基準に反しているようにみえる。

 そんな春日市の救いとなったのが、市内で製造や加工などの主要な工程をすることで「相応の付加価値が生じている」ものであれば返礼品にできる、という国の基準だ。市によると、ロピアの商品は市内の店舗で加工・発送するため、基準を満たすという。

 市の担当者は「全国的な人気を誇るロピアの商品で、苦境からの反転を目指したい」。ロピアの担当者は「『お肉で街を元気にしたい』という思いと、市の思いが合致した。地域経済を活性化するモデルケースを目指したい」と期待する。

 総務省の担当者は「地場産品と感じるかどうかは別にして、基準を満たせば返礼品として出せる」と説明する。【平川昌範】

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