ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(2月、東京都千代田区)

ソフトバンクグループ(SBG)は19日、米インテルに20億ドル(約3000億円)出資すると発表した。同社株の約2%を取得する。SBGは傘下の半導体企業を通じて人工知能(AI)向け半導体を開発しており、インテルへの生産委託につながる可能性がある。SBGはデータセンター投資に続き、AIの頭脳となる半導体の供給体制を構築する。

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SBGは増資を引き受ける形で1株23ドルでインテル株を取得する。同社の18日終値は23.66ドルだった。インテルはSBGからの20億ドルを設備投資や研究開発費に充てる見通しだ。

SBGの孫正義会長兼社長は「インテルが重要な役割を果たす先進的な半導体製造と供給が、米国内でより発展していくことを期待する」と投資の意義を語った。「米国内」をあえて強調したことで、自国産業の復活を掲げるトランプ米大統領と歩調を合わせた格好だ。

複数の米メディアは18日、米政権がインテルに10%を出資する方向で調整していると報じた。出資が実現すれば米政府がインテルの筆頭株主になる。孫氏は1月に米国に5000億ドルのAIデータセンター投資を表明した。インテルへの出資で半導体分野でも米国に資金を投じていく姿勢を鮮明にした。

孫氏が狙うのは「AIインフラの胴元」だ。AI普及に合わせて需要が高まるデータセンターを整備し、データ処理を担う半導体の供給網を築く。AIのインフラ分野を握ることで安定的な収益を確保できるとの青写真を描く。

SBGの半導体戦略の中枢に据えるのが、16年に3兆3000億円で買収した英半導体設計のアームだ。顧客の半導体メーカーに回路設計図(IP)を提供し、チップの販売数に応じた収入を得る事業モデルで成長してきた。

この黒子のビジネスモデルが転換期を迎える。欧米メディアが25年中にも自前の半導体を投入する計画だと報じ、レネ・ハース最高経営責任者(CEO)も「全面的なソリューションへの移行を検討している」と話す。

アームは幅広い半導体企業に設計図を提供する

アームが独自の半導体を売り出せば、既存の顧客と競合する。それでもSBGは爆発的な半導体需要の増加を見据えて自前開発に乗り出す見通しだ。

アームの転身を補完するようにSBGは半導体設計企業の買収で布石を打ってきた。24年7月には英グラフコアを子会社化。25年3月にはAIデータセンター向けのCPU(中央演算処理装置)を手掛ける米アンペア・コンピューティングを買収すると発表した。

米エヌビディアと台湾積体電路製造(TSMC)の株式も取得した。少額出資ながら半導体産業の主要プレーヤーに投資の裾野を広げている。

インテルとの資本提携では半導体での技術協力を深める狙いもありそうだ。SBGは設計特化型の企業を抱えるものの、安定供給には先端の製造ラインが不可欠なためだ。製造受託を手掛けるインテルは有力なパートナーになり得る。

インテルのリップブー・タンCEOは20〜22年までSBGの社外取締役を務めた。AI分野でSBGに助言し、孫氏を「マサ」と呼ぶ。

自前半導体の製造委託先を望む孫氏と、受託生産の顧客を求めるタン氏。旧知の2人の思惑は一致する。それでも先端技術に出遅れたインテルが高性能のAI半導体を供給できるかは見通しにくい。競合のTSMCが年400億ドル規模を投じる今、20億ドルの出資だけではとても盤石とはいえないためだ。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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