経団連=東京都千代田区大手町1で、高添博之撮影

 結婚後に改姓し、旧姓を通称として使用している上場企業の女性役員について、延べ502人が改姓後の戸籍名を有価証券報告書で開示されていることがわかった。経団連が上場企業の女性役員約4900人を対象に初めて調査し、2日に発表した。日本では選択的夫婦別姓制度が導入されていないため、戸籍名の記載で婚姻情報が不本意に開示されるケースがあり、苦痛や不利益を訴える声が度々上がっている。経団連は調査結果をもとに、近く発足する新政権にも選択的夫婦別姓の早期実現を呼びかける方針だ。

 調査は2025年7月時点で実施し、取締役と監査役、執行役について調べた。対象となった東証プライム・スタンダード上場企業は3182社で、女性役員の人数は4912人。このうち、有価証券報告書で通称名と戸籍名の両方が記載されている女性役員の人数は、延べ502人だった。複数社の役員を兼務している場合もカウントしている。

 一方、通称を使っていても有価証券報告書に記載されていない場合は数に含まれず、母数には結婚をしていない人も含まれる。また、企業で通称使用が始まったのは1980年代後半以降とされており、現在50代後半より上の世代では通称を使っていないケースが多いとみられる。

 商業登記簿では、役員が旧姓を通称として使用する場合でも、戸籍名に括弧書きの併記の形での記載となる。企業は株主などへの情報開示を進める観点から、有価証券報告書や株主総会の招集通知でも、商業登記と同様に役員の旧姓と戸籍名を自主的に併記していることが多く、婚姻情報が不本意に開示されることでプライバシー侵害に悩む声が多く上がっている。改姓による不利益を避けるため、あえて事実婚を選ぶ女性もいる。

 調査を担当した経団連の正木義久ソーシャル・コミュニケーション本部長は「今後女性役員が増えて世代交代が進むにつれ、選択的夫婦別姓を求める声はますます大きくなる。先送りすれば問題が拡大するということが改めて示された」と話した。

 また経団連は23年から実施している会員企業の役員に占める女性比率の調査結果も同時に公表した。今回、プライム上場企業全体では18・4%(前年比2・3ポイント増)、経団連会員企業では2・2ポイント増えて19・0%だった。政府は、プライム上場企業の役員に占める女性の割合を「30年までに30%以上」とし、中間目標値を「25年までに19%」と設定しており、経団連会員企業においては目標を達成した。

 女性役員を一人も登用していないプライム上場企業は減少し、経団連会員企業で1・1%(同0・4ポイント減)、プライム上場企業全体で2・4%(同1・8ポイント減)となった。一方で、社内人材の登用の遅れが依然として課題となっている。【町野幸】

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