
着るだけで疲労回復を促すという「リカバリー(休養・抗疲労)ウエア」が活況だ。各メーカーが参入し高額商品が出回る中、低価格で大衆化をはかっているのが「ワークマン」の秋冬商品。9月に発売して2日間で既に昨シーズンの実績20万点を上回り、27万点が売れた。
ワークマン、24年の10倍に生産増
9月上旬、「#ワークマン女子東急百貨店吉祥寺店」(東京都武蔵野市)を訪ねると、平日の日中にもかかわらず売り場の一角に人だかりができていた。人々のお目当てはリカバリーウエアの「メディヒール」。70代くらいの女性グループは、サンプルを手に取り肌触りを確かめたり、店員を呼んで在庫を調べてもらったりと熱心に商品を選び、何点も買い求めていた。
メディヒールは、遠赤外線の放射材料として広く利用されるセラミックスを特殊加工で繊維に練り込む。体から発せられた遠赤外線を放射することで血行が促進され、筋肉のこりや疲労の軽減が期待できるという。
他社のリカバリーウエア製品は、1着1万円を超える高価格帯が主流だが、メディヒールはTシャツとパンツの上下でそろえても3800円。ワークマンの広報担当、松重尚志さんも「圧倒的低価格が支持されている」と話す。
ヒットの予兆は今年の春夏商品からあった。交流サイト(SNS)で「購入したくても売り切れていて買えない」。そんな声が数多く寄せられた。そこで今年の秋冬はメディヒール商品を強化。女性物などを投入し、商品数を昨年秋冬の9種類から24種類に増やした。生産数(販売目標)も昨年の10倍となる200万点とした。
定価の2倍以上も…転売横行
活況の陰でワークマンや消費者を悩ませているのが人気に乗じた転売だ。ある大手通販サイトでは、メディヒール製品が2倍を超える価格で販売されていた。松重さんは「大衆化を目指して低価格を維持してきたのに、必要とするお客様に本来の価格で提供できない。業界全体の信用にも関わる」と憤る。「メーカーの店舗や公式サイトでの購入がおすすめ。ワークマンでも随時入荷があるので安心してお待ちください」と話した。
そもそもリカバリーウエアとは
リカバリーウエアは医薬品医療機器法(薬機法)上、一般医療機器の「家庭用遠赤外線血行促進用衣」に分類される。日本医療機器工業会が定めた血行促進効果などの基準を満たして、製品医薬品規制当局の医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ届け出る。承認は不要で、申請すれば製造・販売が可能。医療機器として申請された製品は、届け出番号が付与されている。
衣料品の受託生産を手がける「オフィス雅」(千葉市)は、リカバリーウエア素材を2年ほど前から扱う。リカバリーウエア関連の問い合わせは、昨年末から増え始め、今年9月は約4割を占めたという。同社の社長、妹尾雅之さんは「血行促進素材への関心の高まりを感じる。効果の感じ方に個人差があるが、実感している人がいるのも確かです」と話す。
一般医療機器としてのリカバリーウエアの定義は「衣類形状を有する」となっているので該当しないが、寝具や雑貨などへ素材を使うことも増えているという。休養や抗疲労をうたった商品は、さらに広がり続けそうだ。【嶋田夕子】
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