敷設のため船に積み込まれた古河電工の海底送電ケーブル

古河電気工業は8日、千葉県富津市に送電用の海底ケーブルの工場を新設すると発表した。投資額は約1000億円で、うち最大307億円を国からの補助で賄う。北海道や九州でつくった再生可能エネルギー由来の電気を東京などに送る用途に加え、アジアや中東で国をまたぐ長距離ケーブルを受注する。人工知能(AI)向けに急増するデータセンターの電力需要も取り込む。

新工場は2030年の稼働を目指す。古河電工が富津市に持つ拠点などに、製造設備や建物を新設する。国からの補助金は、経済産業省の「GXサプライチェーン構築支援事業」に採択されたことによる。

製造するのは海底に敷設する高圧直流送電(HVDC)ケーブルで、交流送電に比べて損失が少なく長距離・大容量の送電に適するという。500キロボルト級の電圧のHVDCケーブルを年間200キロメートル生産できるようにする。

製品供給先は国内が、北海道や東北と東京をつなぐ送電容量2ギガ(ギガは10億)ワット(原子力発電所2基分に相当)・800キロメートル分の海底ケーブル、九州と本州をつなぐ送電容量1ギガワット・40〜55キロメートル分の海底ケーブルを想定している。

国内の海底送電線計画は従来からあったが「事業者が決まり、計画を26年3月末に提示すると聞いている。以前に比べ具体的な検討の段階に入ってきた」(古河電工の西村英一エネルギーインフラ統括部門長)ため、設備投資の実施を決めたという。

海底送電ケーブルは太陽光や洋上風力などの再生エネが天候次第で発電量が左右されるため、つくった電気を無駄にしないよう離れた地域間で融通するのに必要とされる。データセンターの増設で電力需要が世界的に膨らんでいることも追い風となる。

海外の製品供給先では、シンガポールのデータセンター向けに同国外で発電し送電するといった需要が具体化しているという。

(茂野新太)

【関連記事】

  • ・古河電工、最大1000億円で送電線増産 再エネ融通に的
  • ・住友電工、送電線新工場に400億円 再エネ普及で需要増
  • ・古河電工など電線株高い「トランプ氏が大型AI民間投資発表へ」報道
BUSINESS DAILY by NIKKEI

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。