
スウェーデン王立科学アカデミーは8日、2025年のノーベル化学賞を京都大学の北川進特別教授(74)ら3氏に授与すると発表した。狙った物質を内部にとじ込められる「金属有機構造体(MOF)」の研究が、脱炭素や創薬、化学など幅広い産業の発展に寄与することが評価された。
日本出身の自然科学分野のノーベル賞受賞は、25年の生理学・医学賞の受賞が決まった大阪大学の坂口志文特任教授に続き27人(外国籍を含む)となる。化学賞の受賞は19年の旭化成の吉野彰名誉フェロー以来で9人目だ。

授賞理由は「金属有機構造体の開発のため」。北川氏のほか、オーストラリアのメルボルン大学のリチャード・ロブソン氏(88)、米カリフォルニア大学バークレー校のオマー・ヤギー氏(60)の3人の共同受賞となった。
MOFは気体などの分離、回収、貯蔵を効率化できる技術として世界で研究が加速し、産業応用が広がっている。微細な穴が無数に開いていて1グラムあたりの表面積はサッカーコートに匹敵する。狙った物質を大量にとじ込められる。果物の鮮度維持や半導体製造向けで実用化しているが、今後、期待されるのが脱炭素分野での応用だ。
工場で出る排ガスや空気が含むCO2を分離・回収できれば、温暖化ガス排出を大幅に減らせる。ただ、現在の手法はコストが課題となっている。MOFは製造が簡単なうえ、目的の物質が内部の微細な穴に入り込むように設計できるため、低コストで効率的に分離・回収が可能になるとされる。
こうした素材で無数に穴が空いた構造を先駆けて開発したのが北川氏だ。近畿大学助教授だった1989年、金属と有機物を含む「金属錯体」で規則的に蜂の巣のように穴が開いた多孔質材料を作れることを発見した。97年にドイツの化学会誌に初めて論文を発表し、各国で研究が盛んになった。
授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億7000万円)。受賞した3人で分け合う。
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