第64回農林水産祭の天皇杯に決まった「芦別RICE」の沼田哲男会長=北海道芦別市で2025年10月10日午後0時1分、伊藤遥撮影

 北海道芦別市の稲作農家でつくるコメの販売会社「芦別RICE」が、農林水産業者を顕彰する今年度の農林水産祭(農林水産省など主催)の多角化経営部門で、最高位の「天皇杯」に選ばれた。生産者自ら輸出に取り組み、地域活性化に貢献したことが評価された。沼田哲男会長(60)は「小さな町だけど、お米で有名にしていきたい」と、さらなる海外展開に意欲を見せている。

 芦別RICEは2010年設立。きっかけは01年、地元の芦別農業協同組合(JA)がたきかわJAに吸収合併され、「芦別米」の名称が消滅しかけたことにある。

 少子高齢化や実質上の減反政策で国内市場は縮小を続ける中、沼田会長ら3人の農家が地元のブランド米を残そうと奮起。農協を通さず独自にコメを集荷・販売し、より大きな海外市場に挑むことを目指した。

「農協を敵に回す」の声も

 周囲は「農協とホクレンを敵に回す行為だ」と猛反対した。それでも試行錯誤を続け、地場産品を支援する役場からの紹介で、15年に香港への輸出にこぎつけた。

北海道芦別市

 規模拡大のため、地元農家を1軒ずつ訪ねては酒を酌み交わし、仲間を増やした。当初の輸出参加農家は1戸。現在は約40戸に増えた。輸出量も6トン(15年)から1287トン(24年)へ。農水省によると、生産者自身による輸出としては全国最大級という。

 また、人口減が著しい地元で農業の担い手不足を解消しようと、約7年前に田植えや農薬散布のロボット化を実現させた。現在はドローンを使った病害虫の予防・駆除を、道内各地から請け負っている。

 「成功したかは分からないけれど、やってきたことは間違っていなかった」と沼田会長。ここ1、2年、国内向けのコメに高値がついているが、近い将来、暴落するとみる。「乱高下する国内市場より、輸出をやった方が農家の所得は上がっていく」。そんな手応えも感じている。

ニーズは世界中に

 現在の輸出先は香港、シンガポール、米国。11月からはフィンランド、エストニア、英領ケイマン諸島も加わる予定だ。「和食のニーズは世界中にある」。来年度はスイスやイギリスにも芦別米を届ける方針という。

 表彰は11月23日、東京都内で開かれる「第64回農林水産祭式典」で行われる。【伊藤遥】

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