
U-NEXT HOLDINGS(HD)は16日、2030年8月期に動画配信サービスの有料会員数を現状の約3割増となる630万人超とすることを表明した。独自作品の拡充に加え、書籍出版や音楽配信など多方面への展開を進めて海外勢に対抗する姿勢を見せた。
東京都内で30年8月期を最終年度とする新中期経営計画の説明会を開催し、宇野康秀社長が今後の戦略を説明した。
新中計で動画配信サービス「U-NEXT」の有料会員数を630万人超とする計画を掲げた。楽天モバイルが10月にサービスを始めた、U-NEXTが見放題になる新プランなどを追い風にして中計の期間中には年平均で25万〜30万人増を目指す。
小説や漫画などの書籍出版や他の制作会社との共同制作プロジェクトを通じてオリジナルの知的財産(IP)を拡充していく方針を掲げた。スポーツ番組の生配信も手掛けており今後、将来的なスポーツベッティング(スポーツの賭け)の合法化を想定して、新規参入を検討していることも明らかにした。
25年8月時点の会員は494万人だ。あらゆるジャンルの作品数を重視する全方位戦略が奏功し、23年時の目標で25年8月期に450万人超とする目標を掲げていたのを大きく上回った。期限は定めないものの1000万人超とする長期目標は維持した。
宇野氏は「市場のパイ全体はまだ伸びており、顧客も複数の動画配信サービスへの加入に抵抗がなくなってきている」と動画配信の事業環境について述べた。
調査会社のジェムパートナーズ(東京・港)によるとU-NEXTは22年、国内の定額制動画配信サービス(SVOD)市場で米アマゾン・ドット・コムの「プライム・ビデオ」を抜いて2位に浮上した。24年も2位を維持してシェアは17.9%に達し、首位の世界大手「ネットフリックス」の21.5%に迫る勢いとなった。

だが、会員数でみると背中はまだ遠い。ネトフリは24年に国内の登録会員数が1000万世帯を超えており、単純に比較すればU-NEXTの2倍以上の規模を誇る。
宇野氏は説明会で「日本のメディアコンテンツ産業でいうと、極端に外資OTT(オーバー・ザ・トップ、インターネット経由のコンテンツ配信サービス)の独占体制にならないほうが健全だ」との考えを示した。
その上で「日本のプレーヤー同士で何らかの形で連携することが必要だ。機会があって互いに意思疎通ができれば一体化していくという夢も目指したい」と話し再編に意欲を示した。

U-NEXTHDの2025年8月期の売上高は前の期比19%増の3904億円、純利益は同20%増の183億円となり、いずれも過去最高だった。コンテンツ配信や電力小売りの事業が成長をけん引した。
U-NEXTの株価は好調な業績などを背景に、6月には上場来高値となる2359円をつけた。10月16日の終値は年初に比べると20%ほど高い2037円だった。
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