
JR九州の古宮洋二社長は23日、国土交通省で水嶋智事務次官と面会した。西九州新幹線の未整備区間を巡り、佐賀県の費用負担を軽減するよう要望した。同社が佐賀県の立場に沿った要請を行うのは異例だ。
23日午後、古宮社長は東京都千代田区の国土交通省庁舎内で水嶋次官と面会し、8月にJR九州と長崎県、佐賀県のトップが会談した内容を報告した。佐賀県内を通る西九州新幹線の未整備区間の実現に向けた財源面の課題への配慮を求めた。
古宮社長は面会後、報道陣の取材に「(水嶋次官から)西九州新幹線の現状について課題に感じており、国交省と佐賀県、長崎県、JR九州と4者で解決に向けて頑張っていこうと発言をもらった。在来線などの課題もあり、引き続き真摯に議論していきたい」とコメントした。
整備新幹線は国と地方の建設費の負担割合が法律で定められている。水嶋次官は報道陣に「法令で決まったルールを変えて財源問題を克服していくことになると、当事者が知恵を出し合って解決策を模索する必要があるという認識で一致した」と話した。

西九州新幹線は2022年9月に長崎(長崎市)―武雄温泉(佐賀県武雄市)間で部分開業した。博多方面までの整備計画は固まっていない。新幹線を整備すれば在来線の減便にもつながり地元では利便性が損なわれるという懸念がある。
過去には車輪の幅を変えて新幹線と在来線の両方の軌道で走行できる「フリーゲージトレイン(FGT)」方式での整備を国が提案し、佐賀県、長崎県、JR九州の3者が合意した。技術面などの側面から開発を断念し専用軌道を走る「フル規格」での整備に方向転換した。

フル規格で整備する場合には専用軌道を建設する必要があり自治体に追加の負担が生じる。佐賀県はFGT方式なら不要とされた設備建設の実質負担額は1400億円以上にのぼると試算している。
佐賀県と長崎県、JR九州は8月に佐賀県内で3者会談を開催し「国の責任で頓挫したこと、国に対し責任を追及していく」との見解で一致している。
佐賀県の引馬誠也副知事は両氏の面会後、佐賀県庁で報道陣に対して「佐賀県の負担軽減だけでなく、新幹線のルートや在来線の問題もある」と発言し、フル規格を前提とした議論が先行することに警戒感を示した。
西九州新幹線を巡る現状については「そもそもは国がFGTの導入を断念したことにあり、フル規格となれば全く新しい話になる。議論の前提となる(佐賀県・長崎県・JR九州での)地元合意が必要だ」と述べた。
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