
【ヒューストン=赤木俊介】1日から続く米政府閉鎖が米旅行業界に影を落としている。米旅行協会の集計では、23日時点で米国内の旅行支出が31億ドル(およそ4600億円)失われた。米ホテル大手のヒルトンは政府閉鎖により政府関連の出張が減速し、客室収益が下がったと発表した。米航空大手も政府閉鎖のリスクを注視している。
政府閉鎖は23日目に入り、史上2番目の長さとなった。米ホテル宿泊施設協会(AHLA)の代表は22日の声明で「政府閉鎖はホテルや旅行業界に壊滅的な影響を与えている」と訴えた。AHLAの試算では政府閉鎖により宿泊客が減り、米ホテル業界だけで6億5000万ドルの売り上げが失われた。
米旅行業界は政府閉鎖が経済の不確実性を高め、旅行需要をそぐと警戒している。また、閉鎖により政府職員の出張は止まっている。22日に2025年7〜9月期決算を発表したヒルトンのナセッタ最高経営責任者(CEO)は同日の決算説明会で米政府関係の出張が減り、客室ごとの収益が前年同月比1%下がったと述べた。
政府関係の見本市や展示会が閉鎖により相次いで中止、延期となっている影響も大きい。閉鎖がさらに長引けば地方政府や連邦政府の下請け企業などの出張支出も減る恐れがある。
米格安航空会社(LCC)サウスウエストのワッターソン最高執行責任者(COO)も23日に開いた25年7〜9月期決算の説明会で州政府や防衛企業の出張がすでに減り始めていると指摘した。同氏は閉鎖が続けばレジャー需要の鈍化にもつながりかねないとして政府関連の出張支出低下を危険の前兆を警告する「炭鉱のカナリア」に例えた。
デルタ、アメリカンなど米航空大手では政府閉鎖により1日100万ドル前後の損失が発生しているという。業績への目立った影響はまだ出ていないものの、閉鎖の長期化は航空業界にとってリスクとなる。
政府閉鎖中は無給勤務を強いられる航空管制官や空港の保安検査を担当する運輸保安庁(TSA)の負担が高まる。2018年〜19年の政府閉鎖では最終日に管制官の欠員が生じ、全米で航空便の遅延が広がった。
25年10月の閉鎖を巡っては南部ジョージア州の主要空港が20日、TSAの人手不足を理由に保安検査での待ち時間が伸びていると警告した。一部空港では管制官の不足を理由に航空交通の流れを一時的に減らす措置が度々取られており、影響が出始めている。一方、10月1〜22日までの米航空便の遅延率は平均的な水準で推移している。
世論調査会社イプソスが23年に発表した調査では「政府閉鎖となれば航空券をキャンセルする」または「予約を考え直す」と答えた米成人の割合は60%だった。閉鎖が長期化し、全米の空港で混乱が広がれば旅行需要が本格的に低迷する可能性がある。
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