山口製作所の山口社長(22日、静岡県沼津市)

自動車などのねじを手がける山口製作所(静岡県沼津市)はメキシコに工場を建設した。車用照明部品向けのねじを生産し、現地や北米の日系メーカーを中心に供給する。アジア以外に工場を設けるのは初めて。長期的に売り上げ全体に占める米州向けの割合を現在の2割強から3割強に引き上げる考えだ。

工場を建設するのはメキシコ中西部のサンルイスポトシ州で、首都メキシコシティや主要港にアクセスしやすい。既に取得した1万8000平方メートルの土地のうちの2300平方メートルの敷地に工場を建て、2026年1月に稼働させる予定だ。投資額は非公表だが、十数億円とみられる。

メキシコの工場で生産予定の樹脂成型のねじ

主にヘッドライトなどの照明部品を固定するのに使う樹脂性ねじを生産する。ねじを成型する生産設備は当初5台設置し、最大で年間80万本つくる体制を構築する。26年中には生産設備を7台に増やして100万本体制に引き上げる。

山口製作所は1950年に創業した。大量生産に向く圧造加工などの技術に強みを持ち、車用ライト向けや航空機向けのねじ、ガソリン配管部品などを生産する。国内では静岡県沼津市と富士市に、海外では中国、インドネシアなどアジア6カ国に工場や販売拠点を構える。

売り上げに占める販売先の割合は小糸製作所が4割、自動車用燃料配管を手がける臼井国際産業(静岡県清水町)が3割弱だという。山口製作所のねじを使った部品は最終的にホンダやトヨタ自動車などへ供給されるとみられる。

これまで北米向けのねじは日本や中国、アジアなどの生産拠点でつくり、輸出していた。北米の生産拠点として近年、車部品メーカーが相次ぎメキシコに進出し、ねじなどの部品の引き合いも強くなっていることから、サプライチェーン(供給網)を構築する。輸送費などのコストも低減できるとみている。

メキシコの新工場が軌道に乗れば、取得した敷地内に第2工場を建設することも検討する。車用照明部品向けのねじのほか、もう一つの主力製品である金属配管部品の需要もあると見込む。米国のメキシコに対する関税政策の影響は限定的だとしている。

現在最大の生産拠点は中国で、遼寧省などの3カ所の工場には生産設備が計約700台あるという。山口聖三社長は長期的にメキシコを中核拠点に育てる考えで、「いずれは中国に次ぐ生産規模になるだろう」と期待する。

サンルイスポトシ州では日系をはじめとする企業の集積が進みつつあり、労働力も比較的確保しやすいという。メキシコ工場の責任者の岡崎秀雄取締役は「生産年齢人口が増えており、日系企業で働きたいという人も多い」と話す。日本で採用して現地子会社に転籍する1人を除き、従業員はすべて現地で雇う方針だ。

地域別の売り上げは国内が約半分で、次いで中国、北米、アジアが占める。中国は日本車メーカーの現地の販売不振を受けて同社も苦戦している。

北米の売上高は長期的には全体の3割強にする方針。山口社長は「市場が成長すると見込まれる北米向けの売り上げを伸ばし、相対的に中国の割合を下げたい」としている。

(木下美雅)

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