日本経済新聞社はスイスのビジネススクールIMDと共同で11月4〜5日、都内で日経フォーラム第27回「世界経営者会議」を開催します。テーマは「有事のリーダー像〜危機を機会に変える力」。トランプ関税に象徴される不確実性が増す世界で、企業トップは会社をどう動かすのか。リーダーシップや経営戦略について著名経営者らが議論します。一部の登壇者を紹介する特集を掲載します。

ホアキン・デュアト ジョンソン・エンド・ジョンソン 会長兼CEO

データ科学・AI活用を推進

ジョンソン・エンド・ジョンソンのホアキン・デュアト会長兼CEO

米製薬・医療機器大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の最高経営責任者(CEO)に2022年に就任し、23年から会長を兼任する。スペイン出身で米国との二重国籍を持つ。1989年の入社当初はスペインのJ&J医薬品部門に勤めた。医薬品事業のトップを務めたほか、経営委員会の副会長として各部門を率いた。

J&Jは医療機器と医療用医薬品の双方を手掛ける、世界最大のヘルスケア企業だ。医薬部門ではがんや免疫領域に強みを持つ。世界で約13万8000人の従業員が研究開発や製造、販売などに従事する。

デュアト氏は世界各地に勤務した経験から英語やイタリア語など数カ国語に堪能だ。2019年には暫定最高情報責任者(CIO)を務め、サプライチェーンや研究開発の領域で、データサイエンスや人工知能(AI)などテクノロジーの活用を推進した。

祖父は小児科医、祖母は薬剤師、母は看護師の一家に生まれた。スペイン・バルセロナのビジネススクール・ESADEで経営学修士号(MBA)を取得し、米アリゾナ州のサンダーバード国際経営大学院で国際経営学修士号を取得した。

劉揚偉 鴻海精密工業 董事長

EVで日本勢と連携に意欲

鴻海精密工業の劉揚偉董事長

電子機器の受託製造サービス(EMS)の世界最大手、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の董事長(会長)を2019年から務める。創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏に招かれて07年に鴻海に加わり、半導体事業の責任者などを経て後任に指名された。

テクノロジーの潮流に明るく、鴻海入社前は留学を経て米国で複数のスタートアップを立ち上げた連続起業家の顔を持つ。

鴻海会長に就いてからは「人工知能(AI)」「半導体」「次世代通信」の3技術で「電気自動車(EV)」「デジタルヘルス」「ロボット」の3市場を開拓する「3+3」戦略を掲げ、電子機器の組み立て業から技術企業への変革を主導してきた。

米アップルのiPhone組み立てで知られる鴻海は米エヌビディア向けなどにAIサーバーの受託生産を伸ばしている。

24年12月期の売上高は6兆8596億台湾ドル(約34兆円)と過去最高を更新した。

新規参入したEV事業を巡っては日本の幅広い自動車メーカーとの協力に意欲を示す。24年6月から子会社シャープの会長を兼務している。

ジョナサン・グレイ ブラックストーン 社長兼COO

最大ファンド成長の立役者

ブラックストーンのジョナサン・グレイ社長兼COO

米ブラックストーンは企業買収や不動産投資など、今後拡大が見込まれる「代替投資」の分野で世界最大のファンド運営会社だ。預かり資産は1兆2000億ドル(180兆円)。1985年に起業したスティーブン・シュワルツマン氏と二人三脚で率いている。

2018年から現職を務めている。投資戦略や商品の販売先を多様化してきた。預かり資産は就任以来2倍以上に膨らんだ。

1992年に入社し、その後会社全体の成長をけん引する不動産投資で実績を築いた。世界最大の商業用不動産のオーナーに同社を引き上げた立役者だ。2007年に踏み切った米ホテル大手ヒルトン・ワールドワイドの大型買収は、その後の再建と株式公開の成功で話題をさらった。

55歳。次世代の経営者として世界で存在感を示す。米誌フォーチュンは「ビジネス界でもっとも強力な100人」に選んでいる。政府や市場の信頼も厚く、米財務長官への起用が取り沙汰されたこともある。

妻と運営する財団では、がんへの理解を広めて治療・予防に取り組むほか、低所得者に教育の機会を提供している。家族で地方を旅するほどの日本ファンだ。

南場智子 ディー・エヌ・エー 会長

起業を鼓舞「永久ベンチャー」

ディー・エヌ・エーの南場智子会長

1999年にディー・エヌ・エー(DeNA)を創業し、現在は会長を務める。2021年から25年5月まで経団連の副会長も務めた。

06年に立ち上げた携帯電話向けSNS「モバゲータウン」は一世を風靡し、その後もモバイルコンテンツ業界をリードしてきた。24年にはモバイル版の「ポケモンカードゲーム」が世界で1億ダウンロードを突破するヒット作となった。

11年にはプロ野球球団「横浜ベイスターズ」を買収してスポーツ事業に参入し、オーナーとして経営再建に取り組んだ。

球団が26年ぶりの日本一となった24年シーズンでは、クライマックスシリーズから日本シリーズまでの14試合全てを球場で見届けた。優勝後のビールかけにも参加したことで話題となった。

「永久ベンチャー」を標榜し、数年前から社員の社内起業を積極的に支援していることでも知られる。25年2月のイベントでは「DeNAは人工知能(AI)にオールインする」と発言。AI活用により現在の事業を社員の半分で運営できる体制にし、浮いた人的リソースで新規事業に力を入れるとした。

日経フォーラム 第27回 世界経営者会議

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