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 JR東日本グループの広告事業などを担う「ジェイアール東日本企画」(東京都)が2019~23年度に、8府省庁と委託契約を結んだり、補助金を交付されたりした83事業を会計検査院が調べたところ、人件費を過大請求して計19億9527万円を不正に受給していたことが判明した。

 同社は検査院から調査を受けたのをきっかけに今年5月、不正受給を発表。当時の社長が引責辞任した。不正受給の総額が明らかになるのは今回が初めて。

 検査院によると、同社は国の委託事業などで公募や審査といった事務局業務を請け負い、83事業で社員延べ1524人分の人件費を国に請求していた。だが、同社の議事録や電子メールの履歴などを確認したところ、約8割に当たる延べ1179人は業務に従事した事実を客観的に証明する資料が存在しないことが判明。検査院はこうした調査結果を基に、不正受給の総額を割り出した。

 71事業については、人件費の算定根拠となる業務日誌や作業報告明細などを作成する際、事業に関わっていない社員を加え、個々の想定従事時間数や人件費単価などを記載した内部向けの一覧表も作成していた。また、業務従事時間を委託費の限度額や請求可能な人件費の最大額にできるだけ近づけるよう、社員に虚偽の業務日誌作成を指示していたという。

 検査院の指摘対象となった83事業は、内閣府と経済産業省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、環境省、国土交通省、こども家庭庁が委託。57事業で計16億7125万円の人件費を過大に支給していた経産省は、同社に補助金交付や業務委託を一定期間行わない指名停止措置を講じ、不正受給を「遺憾」とする一方、全額返還されれば刑事告発はしない考えだという。

 同社は返還に向けて各府省庁と調整を進めているといい、担当者は「不正の重大性を受け止め、再発防止に全力で取り組む」としている。【山田豊】

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