日本製鉄本社(左)とUSスチール本社が入るビル

 日本製鉄は5日、2026年3月期業績予想を下方修正し、連結最終(当期)損益が600億円の赤字になる見通しだと発表した。従来予想は400億円の赤字だった。米鉄鋼市況の低迷を受け、6月に完全子会社化した米鉄鋼大手USスチールの利益面の貢献を従来の800億円からゼロに見込んだことが主な理由。米東部ペンシルベニア州の同社工場で起きた爆発事故の影響も織り込んだ。

 一方、USスチールは4日、米国内の設備投資や高付加価値製品の拡充を柱とする中長期の経営計画を発表した。総額140億ドル(約2兆1500億円)規模の投資のうち、28年までに約110億ドル(1兆7000億円)を投じる方針で、米国で需要が見込める高級鋼の量産体制を整える。

 具体的には日鉄の技術をUSスチールに導入し、老朽設備の更新や生産工程の最適化を進める。主に変圧器に使われる「方向性電磁鋼板」と呼ばれる高級鋼の生産設備を新設。データセンターの建設急増に伴う需要拡大が期待できるという。

 日鉄の森高弘副会長は決算記者会見で「USスチールの収益体質は極めて脆弱(ぜいじゃく)だが、投資を着実にやっていけば成果は必ず出る」と話し、26年度は収益改善が見込めるとした。

 米メディアは9月、トランプ米政権がUSスチールの工場停止計画を「黄金株」によって阻止したと報道した。森氏は「どこで生産するのかアロケーション(配分)の問題だった。施設の休止が念頭にあったわけではない」とした上で、米政府の関与について「事業の障害になっていることは一つもない」と述べた。【成澤隼人】

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