財務省は5日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、2026年度予算編成に対する建議(意見書)の取りまとめに向けた議論を始めた。建議では財政運営に関する考え方についても触れる見通しで、「積極財政」を掲げる高市早苗政権の下、財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標をどう取り扱うかが焦点となる。
財政審は経済界の代表や大学教授らで構成される。経済や財政の課題を議論し、春と秋に財務相に建議を提出する。PBは社会保障や公共事業などの行政サービスを提供するための政策経費を、借金に頼らずに税収などでどれだけ賄えるかを示す指標で、内閣府は8月、26年度に黒字化するとした試算を公表している。
PBを巡っては、高市氏が21年9月の自民党総裁選でPB黒字化目標の凍結を訴えた過去がある。所信表明演説でも、国の経済規模に対してどれぐらい借金をしているかを示す政府債務残高対国内総生産(GDP)比を引き下げて「財政の持続可能性を実現し、マーケットからの信認を確保していく」と強調した。しかしその水準やPBについては触れなかった。成長戦略を重視する高市氏は、PB目標は財政政策の機動性にマイナスの影響が大きいと考えているとみられる。
財政規律を重視してきた財政審は春の建議で、25~26年度にかけて可能な限り早期のPB黒字化を目指すべきだ▽債務残高対GDP比を新型コロナウイルス禍前の水準に向けて安定的に引き下げることを目指すべきだ――と指摘。財政健全化目標として骨太の方針にも盛り込まれた。
5日の会合で財務省側は、国と地方の債務残高対GDP比を「安定的に引き下げ、将来の有事に備え財政余力を確保することが重要だ」と説明した。
記者会見した増田寛也・財政制度分科会長代理によると、委員の中にはPBの黒字化は非常に重要だという趣旨の発言があったとし、「PB黒字化をみていくことは必要。秋の建議に向けてどのように財政健全化を捉えていくか議論する。各委員の意見が反映されるようにしたい」と話した。
また増田氏は、高市政権の「積極財政」の方針について「経済成長がきちんと果たされれば果実として税収増につながっていく。経済成長と財政健全化は両立する」と一定の理解を示した。
大和総研の久後翔太郎シニアエコノミストは「金利が上がると、国債の利払い費が膨らみ財政を圧迫する。苦しい状況になってから手を打とうとしても遅い。財政運営は長期スパンで考えるべきもので、リスクを最小化するためにもPBの黒字化は重視すべきだ」と指摘している。【加藤結花】
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