JR関西本線の亀山―伊賀上野間を報道公開した(6日、三重県伊賀市の伊賀上野駅)

JR西日本は6日、利用が少ない赤字ローカル線の一つである関西本線の亀山(三重県亀山市)―伊賀上野(同県伊賀市)間を報道公開した。1キロメートルあたりの1日平均乗客数(輸送密度)が2000人を下回っており、「鉄道の大量輸送の特性を発揮できていない」(同社)として沿線自治体に公共交通のあり方の見直しに関わる議論の必要性を訴えた。

名古屋―難波(大阪市)間を結ぶ関西本線で、亀山―加茂(京都府木津川市)間の輸送密度は2024年度に978人にとどまる。国鉄分割民営化した1987年度(4294人)から8割近く落ち込んでいる。

JR西は輸送密度が2000人未満の19路線32区間の収支を公表しており、亀山―加茂間は22〜24年度平均で18億4000万円の赤字だった。100円の運輸収入を得るための経費(営業係数)は884円に達する。

亀山―伊賀上野間を運行するディーゼルカー(6日)

関西本線は東海道新幹線や近鉄名古屋線、名阪国道と競合する。京都外国語大学に通学する伊賀市の19歳女性は「列車本数が1時間1本で乗り換えが大変。せめて2〜3本あれば利用しやすい」と語った。大津市の喫茶店経営・石川毅さん(57)は「雨や獣害で運休が多く、近鉄を利用せざるを得ないことがある」と、保線などの対策強化を求めた。

JR西は三重県内の自治体と協議会を設置し、2月に臨時列車を名古屋―伊賀上野間で、11月には観光列車「はなあかり」を京都―関(亀山市)間で実証運行するなど、中京圏や京阪神からの観光需要の掘り起こしを探る。京都府内でも自治体との協議会を通じ、バス・タクシーによるデマンド交通を運行して利便性向上を探る。

昼間はディーゼルカーが1時間1本運行する(6日)

JR西の阪奈支社の上田太一・地域共生室長は「京都府と三重県をまたぐ路線の特性を鑑みて、自治体・府県ごとでなく一体的に議論することが必要だ」と沿線自治体に呼びかけた。

JR西の在来線3959キロメートルのうち、輸送密度2000人を下回る区間は4割弱を占める。広島・岡山両県の山間部を通る芸備線では備後庄原(広島県庄原市)―備中神代(岡山県新見市)間では24年から国が設置する「再構築協議会」で自治体とあり方の協議が進む。25年度は誘客イベントなどの実証実験で利用促進効果を検証している。

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