前田建設工業とダイハツ工業が実証運用する電力システム(6日、茨城県取手市)

インフロニア・ホールディングス傘下の前田建設工業は6日、12月からダイハツ工業と移動式の電力システムを実証運用すると発表した。太陽光パネルや蓄電池、電気自動車(EV)とつないで電力を効率よく融通する。災害時には避難所へ電気を送り、暖房や冷房を運転する。自治体などの防災需要を取り込む。

茨城県取手市にある前田建設の技術研究拠点で2年間、電力システムを実証運用する。ダイハツがトヨタ自動車グループの豊田中央研究所と共同開発した電力変換器と蓄電池を20フィートコンテナに搭載している。発電設備から取り込んだ電力を蓄電池や建物へ効率よく振り向ける。

ダイハツなどの電力変換器は一般的な電力システムに比べてエネルギーロスが約45%少ない。ダイハツの芹沢毅エネルギーグリッド開発室長は「同じ出力の変換器より大きさは約10分の1で、自動車部品を活用することでコストも抑えた」と話す。

平時は建物の電力消費が増える昼間に太陽光発電を使い、外部からの電力調達を抑える形で活用する。前田建設の笹倉伸晃ICI未来共創センター長は「平常時に(電力使用量の最大値を抑える)ピークカットを実現すれば施設の電気料金を抑えられる」と説明する。

前田建設工業などが避難所を想定した体育館で空調設備を備えた仮設テントを運用する様子(6日、茨城県取手市)

非常時はコンテナを移動させて電力を使いたい施設に仮設の送電網を整備できる。太陽光発電設備から電力を融通して蓄電池やEVにためた電力も使う。離れた施設にはEVを走らせ、電力を供給する運用も検討する。

前田建設の拠点内にある体育館は災害時に取手市の避難所として使う。体育館などで電力を使う実証を通じ、システムの使い勝手や避難所の電力需要を検証する。工事現場やアリーナ、工場、病院などでの需要も探る。

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