
独立系ベンチャーキャピタル(VC)のB Dash Ventures(東京・港)は5〜7日、スタートアップイベント「B Dash Camp(ビーダッシュキャンプ)」を福岡市内で開いた。目玉のピッチ大会では人工知能(AI)関連など12社の起業家が事業モデルを競い合い、不妊治療支援技術を手がけるメデタ(東京・中央)が優勝した。
「不妊治療の成功確率を高め、子どもを失う喪失感をなくしたい」。メデタの伊藤慎悟最高経営責任者(CEO)は壇上で力を込めた。
同社は体外受精卵をAIで画像解析し、移植に十分な細胞分裂が起きる確率などを割り出す医療機器を開発している。受精卵は染色体の異常で細胞分裂が止まってしまうケースが多いが、従来技術では事前に予測することが難しかった。
画像解析では細胞分裂部分の様子を解析して、妊娠確率が高く流産の可能性が低い受精卵を見極める。約800万枚の画像データを活用しており、現時点で精度は8割だという。
山口大学と奈良県立医科大学と共同で研究している。薬事承認の申請も進める方針で、病院などへの導入を見込む。
審査員からは「既存産業から敵視されないか」「協力してくれる医療機関はあるのか」といった厳しい質問もあがった。伊藤CEOは「流産率を見極める手法は我々以外ほぼなく、(システムを)患者に使ってもらうことで導入先のクリニックも収益を得られる事業構造にしている」と答えた。
準優勝はマンションなどの修繕工事や見積もりの効率化サービスを手がけるDeNA系のスマート修繕(東京・港)の豊田賢治郎社長だった。
審査員で主催者のB Dash Venturesの渡辺洋行社長は「(市況など)混沌とした状況下で素材系などバラエティーに富んだスタートアップが集まり、大接戦だった」と総括した。今大会は100社が応募し、AIとディープテック(先端技術)企業が多くを占めた。
ビーダッシュキャンプは約1000人の起業家や投資家が集う国内有数の招待制スタートアップカンファレンスで、年2回開かれる。福岡では同市が12年に「スタートアップ都市宣言」を打ち出した翌13年から開催してきた。
次回は26年5月20~22日の3日間で、札幌市で開く。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。