高市早苗首相は10日の衆院予算委員会で、近くまとめる総合経済対策で自治体向けの重点支援地方交付金を拡充し、使途の推奨メニューに「おこめ券」を盛り込むか問われたが、「検討を深めているところ。確定したものはない」などと述べるにとどめた。
おこめ券配布は、鈴木憲和農相が高止まりしている米価対策として主張している。ただ高市氏は一部の自治体で同交付金を使っておこめ券を配布している例を挙げたが、同交付金の拡充に合わせて推奨メニューに入れるかどうかは明言を避け、「まだ確定していない」と慎重姿勢を繰り返した。
おこめ券はコメ以外の商品やサービスにも一部使えることから、自民党が参院選の公約に盛り込んだ「現金2万円の一律給付」の代案とみる向きもある。こうした指摘について、高市氏は「決して(代案では)ない」と強く否定した。いずれも大築紅葉氏(立憲民主)への答弁。
おこめ券は、コメ卸でつくる全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)の「おこめ券」や、全国農業協同組合連合会(JA全農)が発行する「おこめギフト券」などがある。券はいずれも1枚500円の購入費に対し、実際の換金価値は440円。差額の60円分は券の印刷代や流通経費、マージン(利益)などになっているという。行政による配布促進は「業界への利益誘導」という批判も根強い。
さらに米価高騰は全国的に起きている問題にもかかわらず、政府がおこめ券を配布するかどうかを自治体の判断に委ねることになると、地域によっては受け取れない国民も出てくる可能性がある。
自治体の配布に際しても配送費などの経費や事務負担がかかる課題や、配布対象を全世帯にするか、低所得世帯や子育て世帯に限定するかの線引きが難しいといった課題もある。
おこめ券は、安価な輸入米の購入費用にも使うことができる。地域によってはタクシー代などにも充てることができ、必ずしも国産米の消費拡大につながらないとの指摘も出ている。また金券ショップなどで現金に換金される事例も過去にはあったという。【中津川甫】
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