FASFはのれん会計の見直しの有無について決定を来年3月以降に先送りした

日本の会計基準を開発する企業会計基準委員会(ASBJ)の運営母体である財務会計基準機構(FASF)は17日、M&A(合併・買収)で生じる「のれん」の会計ルールの見直しの必要性について、検討を継続すると決めた。見直した場合の影響が大きいことなどを踏まえ、様々な関係者から引き続き意見を聞き取る。

FASFが同日開いた企業会計基準諮問会議で決定した。FASFは外部からの基準開発の提案があった場合、原則として年3回開く諮問会議で対応を話し合う。経済同友会を含む複数の民間団体などが5月、FASFに対し「償却と非償却の選択制」などを提案したことから、前回7月の諮問会議で意見聴取入りを決め、ASBJが公聴会を6回開いた。

次回の諮問会議は2026年3月に開く予定だ。一般に情報収集などの結果、具体的に検討すべきテーマとして認めた場合はASBJに提言し、ASBJが基準開発に向けた具体的な作業に入る段取りとなっている。

17日の諮問会議ではASBJからのれん会計を巡る関係者ヒアリングの報告があった。FASFの諮問会議委員からは「スタートアップだけでなく日本基準の他の企業からも意見を聞くべきだ」との声が上がった。国際会計基準(IFRS)企業や中小監査法人、銀行などにも意見を聞いてほしいとの要望も出た。

諮問会議の石原秀威議長(日鉄物産副社長)は「国際的な比較可能性のほか、幅広い影響やコスト増への懸念なども踏まえ、会計基準としての改善につながるか評価を進めたい」と話した。

のれんは買収金額と、買われる企業の時価純資産の差額から算出する。日本の会計基準は定期償却を求めるほか、価値が大きく減った際には減損損失を計上する。IFRSや米国基準は償却をせず減損のみで処理する。

日本のスタートアップ関係者などは、のれん償却が利益を押し下げてM&Aの阻害要因になっているなどの問題意識を表明していた。ASBJはFASFの依頼を受けて8〜11月に公聴会を開き、企業や市場関係者、大学教授、監査法人などから意見を聞いてきた。

青山学院大学の鶯地隆継特任教授はのれん会計を巡る議論について「狭い範囲で部分的にコンバージェンス(共通化)しようとすると基準の改悪を招く。無形資産の概念なども含めて会計基準の根本的な枠組みを整理する機会にすべきだ」と指摘する。

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