高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を巡り、中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけたことへの波紋が広がっている。アジア各地からのインバウンド(訪日客)が増えている九州も例外ではない。地理的にアジアに近く、古くから交流が盛んな「アジアの玄関口」が揺れ出している。
福岡市で中国人向けの旅行会社を営む高尾淑江さん(63)は16日、中国の予約客から「迷った結果、行かないことにした」と訪日を中止するという連絡を受けた。紅葉の季節に合わせて福岡市や熊本県阿蘇市など九州を周遊する1週間のツアーを予定していたが、ホテルなどをキャンセルする手続きに追われた。
高尾さんによると、12月分の予約でもキャンセルを検討している中国人客がいるといい、2026年2月には中国と日本の子どもたちが野球を通して交流するイベントを予定していたが、中国側から「訪日を慎重に検討したい」という連絡があったという。
高尾さんは「政府同士のトラブルが民間の活動に影響している。本当に困るが、私たちにはどうしようもない」と深いため息をつく。
中国国際航空など中国の大手航空会社3社は、年末までに一部の日本の空港を発着する便の航空券について、無料での払い戻しや変更手続きを受け付けると明らかにしている。同社の日本支社は「中国政府の注意喚起を受け、乗客への救済措置として実施した。(例年と比べ)キャンセル数に変化はなく、状況を注視していきたい」と話した。日本航空と全日本空輸も現時点でキャンセル数に大きな変化はないとしている。
国土交通省九州運輸局によると、九州への外国人入国者数は25年1~6月で約293万人。上半期としては新型コロナウイルス禍前の18年を超えて過去最多となった。国・地域別では、近隣の韓国が約137万人と最多だが、中国は約64万人と前年同期と比べて1・5倍と伸びが目立つ。
福岡市は経済効果を見込んで博多港(同市博多区)へのクルーズ客の受け入れを進めており、年末にかけて中国から10便以上が寄港する予定だ。市の担当者は「現時点で欠航などの連絡は受けていないが、今後どのような影響が出るかはまだ分からない」と話した。
九州・山口の自治体には、中国との国際交流でも影響が出始めている。
山口県下関市は17日、前田晋太郎市長が18~20日に予定していた中国出張を中止すると発表した。中国・蘇州の太倉港と下関港は友好港協定を締結しており、19日に蘇州で友好港会議を開く予定だったが、中国側から16日に関係者を通じて「延期してほしい」と連絡があったという。延期の理由は分かっていない。【平川昌範、山本泰久、白川徹】
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