1月に売電を始めた阿多野郷小水力発電所(岐阜県高山市)=井上工務店提供

加和太建設(静岡県三島市)は河川などの水流を発電に使う小水力発電事業に参入する。2026年にも同発電を手掛ける森とみずのちから(奈良県下市町)などと共同出資会社を立ち上げる。3〜4年以内に静岡県東部で稼働を始め、年間約1200万キロワット時の発電を目指す。売電収入は3億円超を見込む。

9月に木材関連業の飛驒五木ホールディングス(岐阜県高山市)や傘下の井上工務店(同)と戦略的事業提携を結び、井上工務店の株式を一部取得した。取得額は非公表。11月には森とみずのちからと協業協定を締結した。

12月から森とみずのちからと静岡県東部で河川の流量を調査し、約1年をかけて季節変動を踏まえた流量を測定し発電量を算定する。事業性が見込める候補地十数カ所を選定し、特別目的会社(SPC)を通じて開発を進める。

SPCには加和太建設や森とみずのちから、井上工務店が参画する。全体の設計は井上工務店、土木工事は加和太建設が担う予定。SPCが必要な資金を調達するため、加和太建設の投資負担は限定的だという。

発電した電力は国の固定価格買い取り制度(FIT)を活用し、全量を電力会社に販売する。将来は自社施設で使う電力の活用も視野に入れ、地域内のエネルギー循環にもつなげる考えだ。

設備稼働率70%、歩留まり50%を前提とすると年間約1200万キロワット時、売電収入約3億4000万円のポテンシャルがある、と加和太建設はみる。

小水力発電は最大出力1000キロワット以下で、河川の落差を活用し水車を回して発電する。山地が多い日本は比較的適地が多く、富士山を擁し豊富な水量と落差がある静岡県東部も開発余地があると見込まれる。

太陽光発電は適地減少や景観問題、洋上風力発電は開発の遅れが課題となる一方、水力発電は天候の影響を受けにくく、設備の寿命も長いとされる。

小水力発電を巡っては大手企業の投資も広がる。東急不動産は30年までに500億円超を投じ、発電能力を30メガ(メガは100万)ワット程度まで増やす計画だ。丸紅や清水建設、三菱商事なども小水力発電所を運営する。

矢野経済研究所によると、24年度に50.3ギガ(ギガは10億)ワットだった国内の水力発電導入容量は30年度時点で50.5ギガワットと微増にとどまる見通しだ。一方、中小規模の開発ではFIT活用による新設や既存設備の改修で拡大が続く。

政府も40年度に電源に占める再生可能エネルギーの割合を23年度の23%から4〜5割に引き上げる方針で、その内訳は水力が8〜10%程度と太陽光(23〜29%程度)に次ぐ見込みだ。

加和太建設の24年12月期の売上高は180億円。建設・土木事業が約7割を占め、不動産や施設運営、クラウド型ソフトウエア(SaaS)関連がそれぞれ約1割を占める。24年には新たに「グリーンテック準備室」も立ち上げ、今後は小水力発電を手始めに再生エネ分野を新たな収益源に育てる方針だ。

小水力発電は用地確保や水利権などで自治体などとの調整が欠かせず、参入に向けたハードルは低くない。同社は「地場建設会社ならではの調整力を生かしたい」としており、地域主導の再生エネ開発を広げられるかはその調整力がカギを握っている。

(村上和)

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