中国外務省の毛寧副報道局長

 中国が日本産水産物の輸入申請の受け付けを当面停止すると日本政府に通知したことが19日、明らかになった。中国側の手続きが止まることで、事実上の輸入停止となる。中国外務省の毛寧報道局長は19日の記者会見で、日本産水産物の輸入停止に関連して「中国の民衆の怒りを招いている現状では、日本の水産物を中国に輸出したとしても市場などない」と表明。台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁への対抗措置であることを示唆した。

 中国は、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に伴い2023年8月から続けてきた日本産水産物の全面禁輸措置を解除し、11月5日に日本産ホタテの対中輸出が再開されたばかりだった。

 政府関係者によると、中国側から輸入手続き停止の通知文が届いた。内容を精査中だが、処理水の海洋放出に伴い、原発由来のストロンチウムといった放射性物質の精緻な検査に時間がかかるなどの名目だったという。

 毛氏は「日本側は現状、技術的な資料を提供できていない」として、日本側の手続き上の瑕疵(かし)に原因があると主張。中国側は、輸入手続きを意図的に遅らせることで事実上の禁輸措置を取り、日本側を揺さぶる狙いがありそうだ。毛氏は「(首相答弁を)撤回せず、さらに過ちを重ねれば、中国はより厳しく、断固とした対抗措置を取らざるを得ない」と述べ、さらなる報復に出る可能性に言及した。

 日本産水産物の禁輸を巡って、中国は6月、処理水放出前から食品の輸入規制を続けてきた10都県を除き、輸入を再開する方針を発表。この際、中国の税関当局は日本企業に対し、輸出関連施設の中国での再登録申請を要求した。

 日本側は中国の一部解除措置を受け、今月5日に冷凍ホタテ(北海道産)約6トンを発送した。

 ただ、現状でも日本側が申請した697施設のうち、実際に再登録されたのは3施設。日本政府は中国側に改善を求めているが、今後はこの手続きをさらに遅らせる可能性もありそうだ。

 一方、外務省の金井正彰アジア大洋州局長は19日、首相官邸で高市首相と面会し、北京で18日に実施した中国外務省の劉勁松(りゅうけいしょう)アジア局長との協議内容について報告した。

 協議では、首相の台湾有事に関する国会答弁について従来の日本の立場を変えるものではないことを説明したが、中国側は撤回を求めて譲らず、平行線に終わった。

 金井氏は、日本への渡航自粛要請について中国側に適切な対応を要請。中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事が首相答弁を巡って「汚い首は斬ってやる」とX(ツイッター)に投稿したことに強く抗議したことなども報告した。

 木原稔官房長官は19日の会見で、首相の指示内容については「外交上のやりとりに関する事柄だ」として明らかにしなかった。中国による日本産水産物の輸入規制については「輸出の円滑化を働きかけていくとともに、残された10都県産の輸入規制の撤廃を強く求めていく」と述べた。【中津川甫、渡辺暢、畠山嵩、北京・河津啓介】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。