
石油化学工業協会(東京・中央)は20日、エチレン生産設備の10月の稼働率が76.2%(速報ベース)だったと発表した。7割台は2カ月連続で、好不況の目安とされる9割を39カ月連続で下回っている。各社は生産設備の集約を決めるなど構造改革を進めているが、中国の増産影響で低稼働が続いている。
エチレンは自動車や家電などに使う合成樹脂の原料となり、10月の生産量は前年同月比9%増の45万2300トンだった。前年は定期修理中のプラントがあったが、全てのプラントが稼働していたため生産量は増えた。
エチレン生産設備はボイラーなどの関連設備の運営や費用をまかなう観点から、少なくとも70〜75%程度の稼働率が必要とされる。2025年に入ってからは7割台の月が多く、石化協の工藤幸四郎会長(旭化成社長)は「26年もV字回復とはいえず、80%前後の稼働率がベースになるだろう」と見通す。
国内では生産能力の適正化に向け設備の集約の議論が進んでおり、30年近傍には現在の12基から8基となり生産能力は3割減る見込みだ。エチレンなどの基礎化学品から作られる誘導品でも三井化学、出光興産、住友化学が国内汎用樹脂事業の統合を発表するなど、「25年は個社だけでなく業界をあげて適正規模に向けてのアライアンスが進んできている」(工藤会長)
生産設備の集約で稼働率が高まれば採算の改善が見込まれるが、残った設備の安定稼働の重要性も高まる。自動車など基幹産業への安定供給が必要だが設備の老朽化も進んでいる。山口敦治副会長(ENEOS社長)は「求められる設備への信頼性に対してリソースを割いていくことが大事だ」と話した。
21日にも閣議決定する高市早苗政権の総合経済政策については、特に研究開発や国内投資への政策支援を期待する。トランプ米政権下で多くの企業が米国投資を表明しているなかで、「米投資をやっていく必要もあるが、日本の製造業をいかに強くしていくかという点を欠いてはいけない」(工藤会長)とした。
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