「ふじ」の生産地を訪問するキリンの社員

キリンビバレッジは「午後の紅茶」ブランドから、規格外果実を原料に使う商品を売り出す。キリンビールが過去に売り出した同様のコンセプトの缶チューハイは、定番品に比べて若者の購入比率が高かった。値上げで清涼飲料水市場に逆風が吹く中、環境や社会の持続可能性に配慮した「エシカル」を打ち出して若者を取り込む。

キリンビバレッジは「キリン 午後の紅茶 mottainai(もったいない) ふじりんごティー」を12月2日に期間限定で20万ケース発売する。

1本につき1円を農家に寄付

青森・長野県産の「ふじ」の規格外品

リンゴの品種は「ふじ」を使用する。産地直送サイト「食べチョク」を運営するビビッドガーデン(東京・港)と協力して調達した。ふじはリンゴの中で日本で最も多く栽培されている品種で、甘みと酸味のバランスが整っているのが特徴だ。

生産者によると例年は色づきが悪いなどの規格外が全体の約2割を占め、1割弱を廃棄するという。規格外品のうち加工品として活用できるリンゴをキリンが買い取った。商品の売り上げ1本につき1円を農家に寄付する。フードロスの削減量は3.9トンとなる。

4日に都内で開いた発表会で、青森県弘前市の生産法人RED APPLE取締役の吉川和亨氏は「プロジェクトを通してフードロスの現状やふじりんごのおいしさを知ってほしい」と話した。

キリンが発売する氷結と午後の紅茶の新商品

キリンビールは2024年に「氷結mottainaiプロジェクト」を始め、横浜特産「浜なし」、高知県産「ポンカン」、25年に山形県産「尾花沢すいか」や香川県産「キウイのたまご」など規格外品を活用した缶チューハイ「氷結」を期間限定で販売した。

これまでのフードロス削減量は約86トン。寄付金は約2300万円を見込み、生産農家の苗木や機械の購入などに活用される。27年までに年間250トンのロス削減目標を掲げている。

キリンによると「氷結もったいない」シリーズの購入者は20〜30代比率が30%超と、定番品(25%程度)よりも高かった。氷結ブランドの主なターゲットの30代以上から若年層に間口が広がった形だ。

フードロス削減というテーマの分かりやすさが若者に刺さった。消費者庁の調査によるとエシカル消費を「知っている」と回答した人は10代で34.6%、20代で31.5%と全体の27.1%より高かった。食に関するものであるため「自分事」として捉えやすく、おいしく飲んで社会貢献できるという手軽さが支持を集めたようだ。

「午後ティー」誕生から40年

キリンは氷結での成功体験から、「もったいない」シリーズを若者が紅茶商品に関心を持つきっかけにしたい考えだ。

キリンによると紅茶が国内清涼飲料市場で占める割合は24年で4.8%。キリンが新商品を出すなどして自らけん引することで、35年は6.5%、長期的には10%にすることを目指している。「午後ティー」の愛称で浸透する午後の紅茶は1986年発売のブランド。40代以上の消費者には認知されているが、若者を開拓できていないのが課題だった。

9月には果汁の割合を7%に高めて紅茶の渋みを抑えた「午後の紅茶 FRUITS & ICE TEA」を発売。初日に1000万本を販売した。午後の紅茶シニアブランドマネージャーの原英嗣氏は「もったいない」ブランドで、「新しい気づきにつながる提案を通じて『午後の紅茶』の入り口を増やし、紅茶の魅力を広げていきたい」と意気込む。

9月に発売した「午後の紅茶 FRUITS & ICE TEA」

キリンビールも午後の紅茶と連動して「氷結もったいない」ブランドの第5弾となる「氷結 mottainai ふじりんご(期間限定)」を18日に発売した。グループで夜も昼もエシカル商品を提案して、若者を獲得していく。

(甲斐嗣弓)

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