新潟県の東京電力柏崎刈羽原子力発電所の(右から)6号機、7号機(20日)

原子力発電所の最大限の活用を掲げる日本のエネルギー政策が大きく前進する。福島第1原発事故以来止まっていた日本最大の東京電力ホールディングス柏崎刈羽原発6号機、7号機の再稼働について、新潟県の花角英世知事は21日に容認すると表明し、2025年度内の再稼働にめどが立った。実現すれば東電にとって事故後初となり、首都圏への電力需給の安定など効果は大きい。

政府が2月に閣議決定した新たなエネルギー基本計画は脱炭素電源の大幅な拡充を盛り込み、40年度の電源構成を原子力で2割とした。達成に向け試金石となるとみられていたのが柏崎刈羽だった。東日本大震災後、これまでに再稼働した原発14基のうち、東日本は東北電力の女川原発(宮城県)のみで、西日本に集中している。

東日本では北海道電力の泊原発(北海道)、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)が原子力規制委員会の安全審査に合格し、再稼働に必要な地元同意の手続きを待っている。政府は柏崎刈羽を動かし東日本での原発の再稼働に弾みをつけたい考えだ。

そのため新潟県に対し主要な避難路を国が全額負担して整備するなどの支援を打ち出し、再稼働への同意を働きかけてきた。こうした事情に、新潟県の花角知事は21日に新潟県庁で開いた臨時会見で理解を示した。

記者会見で話す新潟県の花角英世知事(21日、新潟市)

花角知事は会見で自身の考えを記した資料を公表した。そのなかで「国は東日本の電力供給の惰弱性、電気料金の東西格差といった観点から柏崎刈羽の再稼働は極めて重要としている」と触れた。「データセンターや半導体産業などにより産業部門の電力重要の増加が見込まれる中、国民生活と国内産業の競争力の維持・向上のために柏崎刈羽が一定の役割を果たす必要があるとの方針は理解できる」とした。

続けて、原子力規制委の新規制基準に基づく安全審査に17年に合格した柏崎刈羽の安全性については県技術委員会が2月に公表した報告書で「確認された」と結論づけた。「合理的な理由もないのに国の規制基準に合格しているものを止められない。他人の営業の自由もある。県としてはずっと意識してきた」と述べた。

一方、花角知事は容認にあたり国に注文を付けた。屋内退避時の避難所となる学校の体育館に放射線防護対策を速やかに整備するなど、住民の避難計画がより実効性を持てるよう支援を要請した。東電にも県民の信頼を回復するよう努力を求めた。

花角知事は再稼働を容認する自身の考えを県議会に諮る。県議会の12月定例会は12月2日に開会する。県が再稼働に関する広報費として約3000万円の補正予算案の議決を得るほか、県議会側が知事の判断を信任する付帯決議を提出することが検討されている。

県議会は自民党が過半数を占める。現時点で再稼働への賛否の方針は決めていない。党内は推進派から慎重派まで意見は多様だが、党として選挙で支援してきた花角知事が示す結論は一丸となって尊重しやすいとの見方が多い。

県議会も再稼働に同意すれば、知事は再稼働容認を求める国からの要請に回答する見通し。県議会の最終日は12月22日であり、年内に地元同意が完了する可能性がある。7号機はテロ対策施設の完成遅れで当面は動かせない。6号機が福島事故後、東電の最初の再稼働となる見通しだ。

東電による原子炉の起動準備がスムーズに進めば、26年の早い段階で6号機の再稼働が視野に入る。早ければ25年度内には営業運転に移行する見通し。

東電は福島の廃炉費用が経営を圧迫している。東電にとっては原発が1基稼働すれば利益を年1000億円改善する効果がある。原発の再稼働は経営再建の一歩になる。

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